ONIの里

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隠忍伝説(サイドストーリー)

ONIΩ ~希望紡ぐ仔らよ~ 

桃龍斎さん 作

第十一話 時空の支配

ジリジリと詰められていく間合い。
それが一撃を入れられる程なまでになった所で、覇天から先に攻撃を仕掛けた。
「速い!」
天地丸が身構えた時には既に懐に入られており、刃が彼の胴を薙ごうとする。
しかし天地丸はその刃を肘で受け止め、両拳を同時に突き出して覇天を突き飛ばし、改めて構え直す。
その間に御琴が体勢を立て直した覇天との徒手での打ち合いに入る。
「前の響華丸との戦いの後に力を蓄え直したのだ。それを味わえ!」
覇天の繰り出す刃は鋭く、速いだけでなく、狙いが正確。
それ故に御琴だけでは凌ぎ切れず防戦一方どころか、防御が弾かれかける。
そこへ天地丸が加勢するのだが、2人でようやっと互角の打ち合いとなった。
しばらくして、天地丸は覇天の腕の刃を受け止め、もう片方の刃は御琴が受け流した事で隙が生じる。
その隙を逃さず、御琴は右の掌を覇天の胸元に押し当て、衝撃波を放った。
「ぐっ!やってくれる!」
続けて天地丸の放った雷の拳も入った事で覇天は一旦下がって息を整え、腰を落とした途端に物凄い速さで2人の周囲を走り回り、その身体に小さな傷を刻む。
目で追えない速さに、天地丸も御琴も動きを止めて守りに徹するばかりだった。
そればかりではいけないと見て、御琴は自分から覇天に向けて走り、両手から光弾を作り上げて自身の周辺に展開させる。
光弾は覇天が通ろうとした所で爆発を引き起こし、それによって一瞬だけ動きが止まり、そこを狙って天地丸が一足飛びで殴りかかる。
しかしその拳はほんの刹那だけ及ばず空を切り、代わりに幾つかの刀傷が自分の身体に刻まれた。
一方で御琴も攻撃を仕掛けようと動いたのだが、それを見透かされた覇天の刃で鎧に無数の傷を刻まれ、肌にも幾つかの青い線が入る。
「まだまだ行くぞ!」
自信を取り戻していた覇天は今度は壁等も使って飛び回り、頭上から奇襲を仕掛ける。
その奇襲は一撃離脱であり、2人が気づく度に全身に傷が刻まれていくばかりだ。
「……御琴、気づいたか?」
「はい。次に仕掛ける時なら、あるいは……」
守りに徹した事で最小限の傷で済ませる2人を、覇天は腕の刃についた青白いONIの血を舐め回して得意気になりながら見据える。
「ククク、前世では味わっていないが、流石にONIの血。美味だ。そうなれば肉も相応と見える。餓王は劣等な方のものを、ハズレを引いたようだが……」
「良く味わっておけ。その血は二度とは味わえぬものだからな」
天地丸がそう言い放てば、覇天も血を舐め取り切った所で攻撃態勢に入る。
それと同時に御琴が光弾を放ちながら飛翔して上を取り、天地丸が真正面から突進する。
御琴の光弾の雨を掻い潜りながらの動きに、覇天は少し驚きながらも、光弾を弾いて天地丸に斬り掛かった。
「逝ねぇっ!」
左右同時に、袈裟斬りと逆袈裟斬りを交差して繰り出される斬撃。
その中心点目掛けて天地丸は左拳を叩き込み、右拳で覇天の右胸を打とうとする。
それを見え透いた真似と見て覇天は蹴りを放とうとしたが、背後に御琴が降り立ち、彼女の左拳をその背に受けた。
「なっ!?」
裏を掻かれた覇天は前後からの直撃を受けて血を吐き、よろけて倒れかける。
天地丸と御琴は離れると同時に電撃と光の矢を放って彼の動きを止める。
「くっ、流石に2人の鬼神を相手というのはなかなか骨が折れる。だが、これを用いれば勝つ事も容易い!」
挟み撃ちを刃で切り払った覇天は再び息を整えて低い姿勢での突撃態勢に入る。
そして駆け出し、超高速で縦横無尽に移動しながらの斬撃を繰り出した。
が、その斬撃は5秒もしない内に天地丸によって止められ、彼の左拳をそのまま喰らう。
それでも覇天は受け身を取って今一度とばかりに再び神速の移動に入るのだが、次は御琴の結界で動きを封じられ、光を纏った掌の一撃を喰らって吹き飛ばされた。
「くっ、見切ったというのか!?我が神速の攻撃を!」
「攻撃の刹那に生じるほんの僅かな殺気を見切れば事前に対応出来る。後は、自分を狙うと予測すれば受け止めて行く覚悟を決めるだけ。闘争心だけで俺達を止められると思ったら大間違いだぞ、覇天!」
今度はこちらの番とばかりに仕掛ける天地丸。
その連続の拳は動揺から立ち直れない覇天に次々と入っていく。
しかし、御琴は彼の刃の煌めきを逃さず、心の声で伯父に呼びかけた。
「(伯父様!死角に来ます!)」
「(!?分かった!)」
伯父を失う恐怖はあるが、それに臆してはならない事を学んでいた御琴。
彼女は冷静に敵の動きを見抜き、それが伯父に伝わった事で覇天の狙いを外す事に成功した。
「何と!」
「御琴、後は俺一人で大丈夫だ!響華丸と螢の援護を頼む!」
「はい!!」
全ての動きを見切った天地丸は御琴にそう指示し、御琴もそれに応じて響華丸と螢の方へと駆ける。
案の定、尸陰と戦っていた2人は決定打を与えられず、少し消耗が見られていた。

「フフフ、様子見ですか?それとも、本気ですか?」
尸陰はほぼ無傷で2人の攻撃を凌いでおり、隙を見ては斧でどちらかに斬り掛かり、左手からの波動でもう一方を突き飛ばす。
「はわわっ!こっちの攻撃を見切ってる!?」
「この人、何処まで力を隠しているというの!?」
一回目、二回目とほぼ互角の戦いをしてきただけに、響華丸は疑問を感じていた。
尸陰はこれまでと全く変わった気配を見せていないのに、転身した自分と螢を相手に全く苦にならない戦い振りを見せている。
まるで、明らかにこちらを弄んでいるかのようなものだ。
「力を隠している?そう思うのでしたら、正しいと言っておきましょう。もっとも、あなたが予想以上の力を発揮した事に驚いた事は決して演技ではありませんよ、響華丸」
「この人……!」
恐らく、力や手の内が分かれば恐るるに足らないという事なのだろう。
そう見た上で響華丸は尸陰に再び光の剣で斬り掛かる。
それを尸陰は斧の柄で受け止め、次にその剣を滑らせて外すと、斧を振るって薙ぎ払いを繰り出そうとする。
その薙ぎ払いを、駆けつけた御琴の光弾が未然に止め、尸陰の肩にも幾つか光弾が命中した。
「御琴!」
「響華丸さん、螢ちゃん!私も加わります!」
光弾で動きが止まった尸陰に、御琴は追撃の拳を数発叩き込む。
だがそれをまともに受けながらも、尸陰は涼しげな顔をそのままにして距離を取っていた。
「あらあら、覇天は折角力を高めたというのに、魔封童子一人で抑え込まれていますか。まあ、良いでしょう。私も3人を相手にした方が熱く、楽しめるというものです」
2対の翼が広げられ、その翼の羽ばたきと共に黒い刃が竜巻を伴って放たれる。
螢はそれを炎の弾と毛針を陣の要とした結界で食い止めに入り、その間に響華丸と御琴が左右から尸陰目掛けて剣と拳を振り上げる。
「此処まで来たのです。出し惜しみはしませんよ」
尸陰は更に羽ばたきを強めると、自分の前に竜巻の壁を作って2人の攻撃を弾こうとするも、響華丸と御琴は息を合わせて勢いを強め、竜巻を切り裂いてその両肩に一撃ずつ入れる。
「こっちも同じよ、尸陰!」
「これが、響華丸さんとの組で得た力です!」
小さく裂けた両肩から僅かに血飛沫が上がり、僅かに足が床にめり込む尸陰。
このまま追撃を掛けようとした2人だが、尸陰の口元に浮かんだ笑みを見逃さず、すぐさま防御の態勢に入る。
すると一瞬にして2人は尸陰の全身から放たれた衝撃波に吹き飛ばされて壁に叩きつけられ、それまで攻撃を防いでいた螢も目の前に接近した尸陰の斧を慌てて避けに転じる。
「危ない!わわー!」
「ネズミに相応しい、俊敏な動きですね」
身軽さと小柄さが生きたか、響華丸や御琴とは違って螢は縦横無尽に尸陰の周囲を飛び回って斧をかわしていく。
それを賞賛する尸陰は再び衝撃波を放とうとするが、螢はそれを待っていたかのように丸まっての体当たりを尸陰の胸元に直撃させた。
「っ!?不確定要素なだけに、侮れません、ね!」
直撃を喰らって少し動きがぶれたものの、螢が次に繰り出した蹴りを受け流して尸陰は反撃の薙ぎ払いを放つ。
しゃがんでそれを避けた螢は頭突きで尸陰の顎を打つも、全く効いた様子の無い彼女の前蹴りで逆に打ち上げられてしまう。
「今此処で倒せば、その要素は確実に消えます。死になさい!」
無防備になった螢に、斬首の要領で斧を振り上げる尸陰。
その一撃で終わらせようとした所を、体勢を立て直した御琴が光弾を連射して尸陰の右腕を狙い撃ち、続けて疾駆した響華丸の剣による袈裟斬りが、避けようとした尸陰の胸元に小さな傷を刻む。
それで僅かによろめいた尸陰へ、御琴と螢の同時に繰り出した蹴りが炸裂する。
「くっ!流石に倒れないというのは分かっていましたが、本当に楽しませてくれますよ、3人共!」
攻撃を受けて3,4歩と下がった尸陰は不敵な笑みを浮かべて左手だけの印を組む。
その印は強力な結界らしく、3人は全身が突然凄まじい重さに襲われた事を知りつつ、そこから脱しようと力を集中させた。
「このくらいで!」
「終わりません!」
力強い、凛然とした声と共に気合を入れてすぐに重力の支配を破った響華丸は、同じく重圧から脱していた御琴の援護を受けて尸陰に斬りかかろうとする。
「衝掌波!」
「!その技には!!」
尸陰の左掌から放たれた、圧縮された空気の弾丸とも呼べる攻撃を響華丸は左拳で受け止め、右手だけで剣を手にして尸陰目掛けて振り下ろす。
それを受け止めた尸陰は驚きで少し目を丸くしたものの、口元の笑みはそのままで響華丸の剣を弾き、再び衝掌波を彼女の胴に突き刺す。
強烈な一撃は鎧が役に立たない程の威力だったが、響華丸は足を踏ん張って左手からも剣を呼び出して尸陰に斬りつける。
そこへ更に御琴の援護たる水流、炎、雷撃が浴びせられ、まともに喰らった尸陰は衣を吹き飛ばされ、鎧だけを纏う状態となり、最後には螢の火炎弾が炸裂した。
「くっ……!司狼丸達と道鏡の戦いのようには行きませんか。それほどまでに心身が強くなっているという事ですね、響華丸」
「やっぱりあなたも、エレオスと同様に全部の歴史を網羅している……!」
ある程度攻撃が通っていても、焦りの色はさほど見られない尸陰。
彼女は斧を持ち替えながら話を続けた。
「そう、私は前世で全てを知りました。そして真なる目的を持ったのです。正直、素晴らしいですよ。前世でも多少骨のあったあなたが、此処まで来れた事が……」
「響華丸さんを、死なせはしません!」
「尸陰さん、もうこれ以上はダメだよ。只でさえ、輪廻の環を外れているんでしょ?そんな事をして、どうする気?」
御琴が響華丸の横に立ち、螢がそう呼び掛ける中、尸陰は答えようと口を開きかけたが、そこに天地丸に吹き飛ばされた覇天が床に叩きつけられ、すぐに口を閉じる。
「ぐっ……前世とはまるで違う……!如何に鍛錬を積んだとはいえ、前世で俺は奴と渡り合えたというのに……!何故だ!?」
天地丸も覇天も傷を負っていたが、覇天が言うように傷は明らかに覇天の方が深く、消耗も激しい。
対する天地丸は覇天が次に仕掛けるであろう攻撃を油断無く待っており、同時に目を以て響華丸達に手出し無用と告げている。
尸陰はそれらをしばらく眺めていたが、覇天の方へ近づき、穏やかな声を掛ける。
「まだやれますか?それとも、私の力を借りますか?」
「ま、まだ手は借りぬぞ、尸陰!俺は、あのようなONI如きに敗れる訳にはいかん!」
身を起こした覇天は最後の炎とばかりに全身から邪気を放ち、それを天地丸に巻き付かせて動きを封じる。
そしてそこから前屈みの姿勢で走って両腕の刃を交差させての一撃を放つ。
しかし、その挟み込む一撃は天地丸の左腕でガッチリと受け止められてしまい、それを見て驚く間も無く覇天は彼が繰り出す雷光の右拳を胸元に貰った。
「う、嘘だ……!あの時は、相討ちに近い状態だったのに……そこから時を経た俺の方が、上の、はず……!」
胸元を中心に鎧が粉々に砕け散り、露になった肌も血で赤く染まった覇天。
彼は尸陰の足元に転がり込むように落ち、何とか起き上がろうとしたのだが、腕の刃も砕けており、自分の持つ治癒能力も追いつかなくなっているらしく、喘ぎと呻きを繰り返すだけだった。


覇天が倒され、尸陰が響華丸達4人を見据える中、彼女は笑みを消して一息漏らす。
「……他も全滅し、欠員が無しと来ましたか」
そう言いながら響華丸達の後方を見ると、そこには沙紀達が駆けつけており、多少の傷もしっかりと癒していたようだ。
「間に合ったようね。良かった」
「さぁて、残るはあんただけだね。尸陰」
沙紀が響華丸達の無事に安堵し、エレオスが拳を鳴らして近づく中、ミルドは周囲を、そして司狼丸が磔にされている巨大な十字架を見渡していた。
「まさか此処まで追い詰められるなんて、夢にも思わなかったかしら?それとも、これもあなたの計算の内?」
ミルドの問いに、尸陰はしばらく黙っていたのだが、落としかけていた視線を上げると、そこには何時も以上に大きな笑みを浮かべている彼女の顔があった。
「本当に、前世を超えた座興をありがとうございます、ONIの方々。実の所、もう全ての準備が終わっていたんですよ。私の計画が成就する、全てが」
「「!?」」
「お、おお……では、遂に……!」
響華丸達の顔が引き締まり、覇天の顔が歓喜の笑みに変わる中、尸陰は斧を掲げて高らかに叫んだ。
「四劫を乗り越え、一大劫を経て高まりし力よ!今此処に発現する時が来ました!眠りから目覚めるのです!時空を操る力よ!」
叫びに呼応して、司狼丸を磔にしていた十字架が黒紫色に輝き、その輝きがジワジワと司狼丸の魂に流し込まれて行く。
「そうはさせない!」
「何処までも思い通りに行かせる程、このラストプリンセスは馬鹿じゃないってね!」
響華丸と転身したエレオスはすぐさま尸陰に殴りかかるが、尸陰の周囲にも黒紫色の結界が展開しており、2人はそれで弾き飛ばされてしまう。
「このままだと、司狼丸が……!」
「司狼丸……!!」
「やめやがれぇぇっ!」
響華丸とエレオスがそれぞれ御琴とメイアに抱き留められる間にも、司狼丸の魂は侵食されていき、沙紀が半泣き状態になり、螢も唇を噛み締め、江が思い切り叫ぶ。
それらも虚しく、司狼丸の魂たる映像は消え失せ、紫色に禍々しく輝く光の球が尸陰の手の上に下りて来た。

「ウフフフ、十二邪王の一部が愚かにも負の感情を出さなかった事で質が落ちるかと思いましたが、今の負の感情で、その遅れが取り戻せました。これで全てが私の掌中に収まります」
その言葉に、一番耳を疑ったのは覇天だった。
「!?今、全てがお前の掌中と言ったのか……!?金剛様は、八将神の金剛様はどうされたのだ!?」
次に覇天の耳に入ったのは、彼にとって信じられない事実であり、尸陰の、彼に対する侮辱そのものだ。
「金剛?ああ、まだ不完全な時空童子如きに他の7人ごと消された神気取りの小物ですか?覇天、あなたは意外と愚かだったようですね。この時まで、ずっと信じていたのですか?金剛という、前世でも現世でも既に消え去った存在の復活を」
「馬鹿な……大凶星八将神様達は、我らが主のはず!まさか、主に謀反を……!?」
「ふっ……フフフフ、アハハハハ!!本当に何も知らず、今日まで生きて来たとは、あなたの生き様はまさに無駄な人生という事ですねぇっ!!アッハハハハ!!」
大声で笑い出した尸陰の眼が、此処で大きく変貌する。
涼やかな、少女に相応しい目つきが、まるで悪鬼そのもののようなものになっているではないか。
「あなたや餓王、斬光にとってはそうかもしれませんが、この私尸陰にとっては道具に過ぎません。そう、三世を超えた全てを支配するという、私の目的を果たす為の、引立て役でしかなかったのですよ」
「……あんたは正真正銘、本物の危険人物だわ」
冷静さを一早く取り戻したミルドがそう言って睨むも、それを受け流す形で尸陰は目つきを少女のものに戻して語る。
「順を追って説明しましょう。私は前世の更なる前の世にて生を受けました。それは宇宙、即ちこの全ての世界を創造した者の意志によるものであり、私はそこで三世の仕組を学んだのです。同時に、ONIの存在も知りました。神をも凌ぐその力は凄まじく、一部の邪神は彼等を危険視しました。私も創造者の手で生まれながらも邪神の一人……ONIを無視するはずがありませんでした」
「そして、前世に転生した際に行動を起こした訳ね。ONIに関する事を……」
知りたかった真実が今、尸陰の口から明かされる。
それ故に響華丸は気を引き締めて彼女の言葉を聞いた。
「そう。私が生まれた時の世には、司狼丸達は存在しませんでした。そして、ONIの伝説はそちらにいる天地丸達の伝説が主で、数多くが肯定され、否定を受けたのは朱羅丸と影の新撰組、つまり大和丸達くらいでした」
「……あんた、ひょっとしたらあたし達の王国も……!」
エレオスはもしやと思ってそう言いかければ、尸陰も笑みで頷くと共に答える。
「行動を起こしたのは響華丸の言うように前世。その前は王の病死に伴った継承者争いであなた達の文明は滅んだ事になりましたが、そこを上手く利用し、ONIの一部に呪いを掛けたのです」
「やっぱり……!司狼丸達や別世界の天地丸達を、そしてあたし達の転身した姿をあんな風にして、天罰で片付けた神は、あんたって事か。だとすれば全部繋がるわね」
「その通りです。神を装えば全てが丸く収まる。醜い姿となれば人々はONI達を化け物呼ばわりして否定する。大和丸達ですら力故に否定されたのです。いわんや、妖怪や獣と何ら変わらない姿をや、という事ですよ。結果は、沙紀、あなたも知っての通りです」
「そんな事の為に、司狼丸が苦しんで、外道丸は……!!」
沙紀の奥底から怒りの炎が再燃する。
大地の怒りが露になりそうな、そんな炎だ。

「実の所、地球で人間達が文明を築いた時に、私はある種を、災厄を司る種をばら蒔いたのです。その直後はある巫女と勇者達によって種は地獄に封じられましたが、その思念はキチンと人間界に残り、時を経て一人の存在を動かしました。残念ながら、前世でも現世でも、その人は響華丸に討たれてしまいましたが……」
「!おい、まさか種って……」
「そんな、馬鹿な!!」
江と覇天の顔が青ざめ、それを心地良さそうに眺めながら尸陰は答えた。
「お気づきの通り、その種こそが私の造り出した神、本来の八将神とは違って北斗七星と輔星の力より生み出した、大凶星八将神です。道鏡は前世でも現世でも、そこにいる天地丸達に敗れた者と同一です。そして前世の、司狼丸達の世界は長い間地獄の呪いに苛まれました。そこに発現したのが、ご存知、時空を操る力……これを八将神や道鏡を通じて知った時、私は確信しました。それこそが、私を真に創造主としてくれるものである、と」
「どういう事だ!?それが三世とどういう関係になるっていうんだ?」
琥金丸の問いに答えたのはミルドであった。
「前世から現世、現世から来世に到るに当たって、全ての存在は一度崩壊して無に帰るわ。そしてそこから新しく命が生まれ、前世とは少しだけ形を変えて造られた世界が現世なのよ。一つの世が終わるには、一大劫、つまりとてつもなく長い時間が掛かる。真に魂が転生するとは、その時生じた輪廻の環に従う必要があるの。そして、尸陰はその環から脱し、創造主に成り代わろうとしているという事なのよ」
「ご説明ありがとうございます、ミルド・アルカナ。さて、私の確信からでしたね。司狼丸は最初、せいぜい50年後の世界へ飛べる程度のものでしたが、過去を遡れるようになり、そして私の手駒たる八将神達を葬れるくらいにまで力を高めました。その力を私が手にするべく、此処で私は策を練りました。それが司狼丸を孤立させ、一度金剛を蘇らせて焚きつける策。それによってこの通りとなったのです」
「響華丸は前世から生まれた存在、そして特別なものだった為に、お前にとっての最大の邪魔者となった訳か」
オウランも響華丸と今の話を繋ぎ合わせてついて来ていたのだが、そこへメイアが一つの疑問を投げかける。
「それは分かったんだけど……どうして前世での司狼丸の力に満足しなかったの?まだ、隠されている力があったから?」
「その通りです。覚醒してから短期間で時間を遡れる程なまでに成長したその次は、一大劫を越えられる力を手にする事でした。故に、前世の司狼丸を寝かせておいたのです。触媒として、人間達の嘆き悲しみ、悔しさが必要でしたので、一時的に計画は遅れました。しかしその不足分も解消済みとなりました。後は、その司狼丸の最後の拠所となる響華丸のみです」
「……もしかして、私が御琴達の世界から司狼丸達の世界に最初に戻った時の声の主は……!」
「響華丸を無力化するべく、私が正義の神々の威厳、名前を利用して足止めを行わせたのです。これは前世とは全く変わらず、結果は今に到った形でした。しかしあなた方が頑張った所で司狼丸の力が熟成し、それを私が手にするという事実は変わりません。ともあれ私ですら手に入れていない力を、司狼丸が手にしていたのですから、逃すはずがなく、故に今回の計画、という事です」
「神様までも弄んでいた……!何て人なの……!」
「俺達に直接関与していないとはいえ、見過ごせないぜ!」
「ああ。今度ばかりは私も抑える気にはなれない」
「益々、これ以上の横暴や狼藉は許されなくなった!甦った意味は、此処にもあるようだな!」
「世界を乱した悪の元凶……!確実に沈める!」
大和丸達も怒りを抱き始め、気を解放し始める。
そうした彼等を嘲笑いながら、尸陰は手の上の球を見せつけた。
「あなた方は幸運ですね。真なる歴史の始まり、その瞬間に立ち会えるのですから。私こそが、時空を、三世を支配する創造主となる権利の持ち主……!」
「ふざけるな、尸陰!俺は貴様の操り人形にはならん!!!」
覇天は先程の衝撃から立ち直っていたのか、声を荒らげながら突撃する。
尸陰はそれを流れるように避け、斧の一撃で彼の身体を上下に両断した。
「がぁっ……!こ、金剛……様……!」
「逃げれば良かったというのに、往生際が悪い人ですね」
斧で斬られた覇天は黒紫色の炎に包まれ、その中で完全に消滅してしまった。
残る尸陰は、その最後を見届ける事無く、球を自分の胸元に納める。
その瞬間、彼女の身体からとてつもない力が湧き上がった。
不完全な復活を遂げたとはいえ、エレオスの身体が僅かに震える程の、凄まじい力。
尸陰本人の言うように、一大劫の永い時を経た司狼丸の力が働いているのであろう。
響華丸達もその力の高まりに身体の震えが止まらず、それでも退けないとして尸陰を睨んだ。
「成程、あくまで抗うという事ですか。では今こそ教えましょう。私はその存在そのものが混沌であり、生まれた時より不和と争いを尊ぶ存在……その為に私に抗う事は無意味であり、全ての運命は私の手の上にあるのです」
「その物言い……金剛を生んだだけの事はあるな」
江はそう言って身構えるが、螢は何も言わず、じっと尸陰を見詰めるだけ。
そして、響華丸は光の剣を伸ばして尸陰の方へ突き出した。
「尸陰……あなたを絶対に打ち倒す……!そして、司狼丸も救い出すわ!」
「出来るものでしたら、やってみて下さい。ですが、あなた達は絶望して命を投げ出すでしょう。そうした者達にこそ、私の洗礼は相応しい……」
尸陰はそう呟くと、ゆっくり斧を構えて響華丸を見詰めた。
お互いに、最大の敵だと認識していたのである。


「さて、早速ですが……此処で多くの神々はあなた方を侮り過ぎた為に大敗を喫しました。その教訓から、一気に終わらせて頂きます」
そう言った途端、尸陰の金の瞳が輝いて全身から黒紫色の邪気が一気に溢れ出す。
闘気の防御が間に合わない程の勢いを持つそれに、響華丸達はあっという間に飲み込まれた。
しばらくして、邪気は自然と消え去っていき、その邪気が晴れるのを待っていた尸陰は少し首を傾げる。
響華丸達はその邪気の攻撃で負傷はしているものの、誰一人転身が解除されておらず、全員まだ十分動ける状態にあったのだ。
「このくらいだったら、勝てる相手だ……!」
「うむ。耐え切った上で勝機は見い出せた!後は防御に関する謎を解くのみ!」
朱羅丸とリョウダイが意気を上げた事で、琥金丸と伽羅も互いに顔を合わせて頷き、攻撃態勢に入り、オウランも剣を両手持ちに構えて吼える。
「尸陰よ、時空を、三世を支配すると大口を叩いて此処までとは。一気に終わらせるのではなかったのか?」
あるいは小手調べのつもりなのか、という問いもある中、尸陰はふむ、と息を漏らしながら答えた。
「今の一撃で、あなた方の時間を捻じ曲げ、急速に魂まで消滅させるつもりだったのですが、どうやらまだ時空を操る力を掌握し切れていないようですね。やはり司狼丸の前世の魂が、私の中で抗っているという事なのでしょう。自分を助けようとする者が居る限り、自分は絶対に諦めない、そうした希望をまだ抱いているとは……」
全身からの邪気は炎のように揺らめいており、その中で何かを観察するかのように尸陰は響華丸達を見渡す。
「では、別の手を考えましょう。これならば、確実に全てを満たせます」
「「!」」
次の攻撃が来るかと見て、それを阻止するべく響華丸が動く。
彼女の瞬時に繰り出した居合の一撃に、尸陰も斧の柄で受け止め、それを押し返すと、先程とは異なる青紫色の邪気を放って響華丸の身体を包み込む。
「くっ!こんなもの……!」
「無駄です。最早私を止める事は不可能なのですから」
呪縛から脱しようとした響華丸に向けて、尸陰は次に赤紫色の邪気を叩き込む。
「うあぁ……!!ぐぅっ!!あ、頭が……!!」
瞬時に転身が解けた響華丸は激しい頭痛に襲われ、その全身も見る見る内に傷と血で埋めつくされる。
「響華丸さん!!」
「やめろ、尸陰っ!!」
御琴とエレオスが助けに向かおうとするも、尸陰は斧を振るい、その衝撃波で2人を、そして後ろにいた天地丸達を吹き飛ばして壁に叩きつける。
「こ、これは何と凄まじい力ですの!?前世の司狼丸の魂が、これほどの力を!?」
「ただ単に混沌そのものを名乗っている訳じゃ、なさそうね……くっ!」
叩きつけられても、何かに縫い止められたかのような重圧で壁から抜け出せない。
葉樹が驚き戸惑い、ミルドが力をどれほど入れても外れない拘束。
エレオスも例外ではなく、首から上を辛うじて動かせる程だ。
「私の最大の壁は響華丸。彼女さえ倒してしまえばそれで良いのです。言っている意味は、後程お教えしましょう。死出の土産として、ね……」
「あぅぅ……み、皆……!」
響華丸も仲間達の方を見ながら動こうとするのだが、邪気の呪縛は振り解けるものではなく、体の内側から力を抜き取られるような感覚に襲われ、激痛に苛まれるだけである。
「では、響華丸。あなたの力の源を奪った上で、前世と同じ末路を辿って頂きましょう」
尸陰はそう言った途端、左手から迸った紫電を響華丸以外の全員に、同時に叩き込む。
その電撃を浴びた天地丸達は次々と自身の身体が下から消滅していくのを目の当たりにした。
「な、何だこれは!?意識が、飛ばされる……っ!?」
「伯父さん!御琴ぉっ!!」
「響華丸さん!琥金丸さん!!」
「伽羅、御琴ぉぉっ!!」
「嫌!助けて、琥金丸!!」
天地丸、音鬼丸、御琴、琥金丸、伽羅が紫電の中で完全に姿が消滅していき、次に大和丸達が姿を消していく。
「こいつは、一体……!?」
「これが、奴の真の力なのか!?」
「に、兄さん!皆ーー!!」
「夏芽ぇぇっ!!」
「くそ……身体が、言うことを……」
次々と消滅していく仲間達を目にして、響華丸は必死にもがき出す。
「やめ、なさい……!!尸陰……!!」
「これが私の力であり、あなた達と私の、絶対に埋められない差です」
冷徹に尸陰がそう言い放つ中、朱羅丸、葉樹、エレオス、ミルドが次なる消滅の番となっていた。
「う、うおぉぉっ!!」
「全てを超越する力、という事なのですか!?」
「尸陰、お前はあぁぁっ!!」
「ちぃっ……!!」
紫電の迸りは衰えを知らず、見る見る内に仲間達が抹消されていく。
それは響華丸にとって耐え難い苦痛でもあった。
「エレ!?嫌ぁぁぁっ!」
「響華丸……勝てぇっ!」
「此処で果てるだと……!?無念……!」
「響華丸!響華丸ーー!!」
「こんちくしょおぉぉぉっ!!」
「わわわー!」
遂にメイア、オウラン、リョウダイ、沙紀、江、螢が消滅し、それが完了した所で紫電は自然と消えた。
「あ……あ……」
何時の間にか目が虚ろになり、呪縛が解けても力無く倒れ伏す響華丸。
それを見下ろす尸陰は満足そうな笑みを浮かべて彼女が立つのを待った。
「ん……皆……え……?」
しばらくして立ち上がった響華丸は周囲を見渡すのだが、大きな事実に気づく。
それは……
「私は、誰と一緒に戦ったの……?私は響華丸……司狼丸を助ける為に、戦って来た……」
「そう、あなたはたった一人で此処に来ました。私の事はお分かりですか?」
「尸陰……!でも、あなたを倒すのは、私だけじゃあない……私と、後……え?」
意識を取り戻す際に、自分を支えてくれた仲間達の記憶が完全に抹消されていた響華丸。
それによって戸惑い頭を抱える彼女を見て、尸陰は笑いを漏らしながら斧を振り上げる。
「もうあなたが頼るべき仲間はいません。元から居なかったんですよ、あなたに仲間なんて」
そう言って振るわれた斧の一撃が響華丸の左肩を切り裂く。
「ぐっ!私は……!転身!凶破媛子!!」
傷を負った響華丸はそう叫ぶと、その身体が鬼神のものへと変わる。
その光景を見ても、尸陰は全く表情を変えていなかった。
「凶破媛子への転身は出来るようですね。まあ、たった一人で出せる力なぞ、しれたものではありますが……」
「私は、一人になっても戦うわ!司狼丸を助けられるのは、一番に助けるべきは、私よ!」
「ありがちな、泣かせるお言葉ですね。でも、もうあなたの運命は決まっているのです。即ち、あなたは此処で死ぬのです!」
傷の癒えた響華丸は果敢に尸陰に斬り掛かるが、それを受け流した尸陰も斧と衝撃波で彼女の全身を切り裂き、吹き飛ばす。
それでも足を地面に突き刺すようにして踏ん張った響華丸は、迫って来た尸陰の斧を剣で弾き、光弾を何発も彼女の胴に叩き込む。
「なかなか頑張るようですが、消え行く炎として楽しませて頂きましょう。アハハハ!」
攻撃を受けながらも笑いを絶やさない尸陰に、響華丸は先程以上に息切れしてはいたが、すぐにその息を整えて剣を両手で握り締める。
「(思い出せない……分からない……でも、司狼丸を助けるだけが、私の役目じゃない。そんな気がする……!!)」
真っ暗な闇の中、前を突き進み、一粒の光を探そうとする響華丸の心。
その真っ直ぐな想いが、彼女の心の闇に、孤独という闇に封じられていたはずの力を引き出している。
しかし尸陰からすれば、その力は無力に等しいように見えていた。
友愛の鬼神の要は、人の心と心が結ぶ絆であり、それを記憶抹消によって永遠に消し飛ばしてしまえば、鬼神の力は支えを失った建物と同じく容易く崩れ落ちる。
仲違いを起こした所で、すぐにその絆は蘇るという事を考えれば、記憶・関連性の一切を抹消する事が効果的。
尸陰はそう踏んでこの策に出ていたのだ。
「さて、強がれるのも今の内です。あるいは、その強がった表情のまま死んで頂きましょうか?何れにせよ司狼丸が絶望する事に変わりありませんけれどもね」
最早邪魔者は居ないとして、尸陰は先程とは桁外れの速さで斧を振り回しつつ、響華丸に切りかかった。

「こ、此処は……何処!?」
「皆、気づいた~?」
黒紫色の異様な空間の中で、沙紀と螢は周囲を見渡していた。
尸陰の紫電で消滅させられた天地丸達も全員その空間の中にいて、全員転身が解除されていながらも、誰もがお互いに無事を確認し合う。
正直な話、無事と言えるものではないが……
「?!響華丸だけが、取り残されているぞ!」
「転身は出来ているようだが……一体どういう事だ?」
琥金丸が見つけたのは、中央上部に浮かぶ、響華丸と尸陰の戦っている光景であり、天地丸は状況をある程度把握出来ているようだった。
そして、その詳細を語ったのはミルドだ。
「正直、やられたわ。尸陰の本当の狙いは、最初から響華丸たった一人だったのよ。この現世での響華丸の死を、自分の中にある司狼丸に見せつければ彼は絶望し、力の全てを解放した上で、尸陰に明け渡す……そんな段取りになっていた」
「前世では司狼丸さんが封印された後で、響華丸さんが彼を助けようとして尸陰に殺された……でも、その時の司狼丸さんはそれを見ていなかったから……」
「ええ。御琴の言うように、前世の響華丸が倒された時は尸陰の望みは叶わなかった。あるいはこう考える事も出来るわね。あいつの言うように、一大劫分寝かせてから、絶望を与える事で完全に力を掌握する。そうすれば、確かに三世も時空も支配出来るわ」
「で、今あたし達が居る場所は分かるのか?」
江も気になっていた疑問にエレオスが周囲を見渡し、見えない壁に手を触れながら答えた。
「此処は、時空の流れから完全に切り離された空間よ。あいつはあたし達を直接時間逆行とか時間の早送りとかで消滅させられなかったから、こうする事で擬似的に響華丸からあたし達を切り離したって事。あいつからあたし達の記憶を抹消して、それで弱体化を測ったのよ。心の力、その要を見抜いての策謀とは、やってくれるわ。響華丸を始末すれば、あたし達を何時でもぶっ飛ばせる。だからこうした座興を用意したんでしょうね」
「エレ、どうすれば此処から出られるの?」
「今、それを考えているわ。司狼丸はあたしの血脈。一番時空を操る力が強大だとしても、質の理解そのものは不可能じゃあない。もっとも、それまで響華丸が持つかどうかってのが最大の問題だけれど」
それを聞いて、メイアは響華丸の方を見る。
彼女は尸陰の攻撃を受け続けて全身が青白い血にまみれており、尸陰が受けた傷はまたたく間に癒えてしまっている。
それが余計、メイアを不安にさせていた。
「……お願い、エレ!一秒でも早く解決法を!」
「言われずともそのつもりよ……!尸陰は、ぶん殴らないといけないヤツだからね……!!それ以上の催促は無用よ。ミルド、手伝って」
「考える手伝い、ね」
エレオスとミルドが空間を見渡し、壁や床に手を触れたりする中、天地丸達は引き続き響華丸の戦いを見守る事を選ぶ。
彼女が勝つ事を、祈るしかない。
万に一つの可能性が無くとも、ほんの一粒の光たる可能性を、彼等は信じていた。


「さあ、そろそろ死んでもらいましょう!」
遊びは終わりとばかりに、斧を両手持ちに高く振り上げた尸陰は、傷だらけの響華丸に向けて黒紫色の炎を放つ。
それを響華丸は光り輝く剣で刺し貫きに入り、そのまま炎に飲み込まれた。
「終わりです!これで、これで全てが私のものとなります!見えますか、司狼丸!あなたの最後の希望が消えていくのが!感じますよ!あなたが恐怖し、絶望するのが!」
鼓動が高鳴る中、尸陰は自分の力も高まっているのを感じ取り、炎の勢いを強める。
それによって、響華丸の姿が消え失せたかに見えたが……
「……え?!」
瞬時に、炎から飛び出して目の前に姿を見せた響華丸。
あちこちが火傷に覆われていながら、転身が解ける気配は無く、装甲の端が融けただけの彼女は思い切り剣を振り下ろし、尸陰の左肩に鋭い傷を刻んだ。
「!!何ですって!?」
傷そのものは簡単に癒す事が出来、力が消耗する事もない為、些細な問題であった。
尸陰が驚いていたのは、響華丸の状態であった。
真っ直ぐ自分を睨む彼女は、そろそろ疲労が限界となり、憔悴して転身が解けてもおかしくないはずだった。
何より、現世での最初の戦いで転身を解除しかけた攻撃を、その時を凌駕した威力で放ったのに、結果はある程度の傷にしかなっていない。
それが、尸陰から確実に余裕を奪っていた。
「……何が消えていくのかしら?誰が恐怖して、絶望するのかしら?」
「……っ!」
入りが浅かったのならば、今一度。
その念も込めて、尸陰は更に力を強めた炎を響華丸に叩き込む。
「ぐうぅぅっ!!」
響華丸は直撃を喰らって鎧が吹き飛ばされ、衣ごと肉体が焼かれていくのだが、踏ん張った両足は微動だにせず、瞳の輝きも鬣の輝きも衰える気配が無い。
そして炎が止んだと見るや否や、彼女は一足飛びに斬撃を繰り出すと、尸陰が回避に移っているにも関わらず、剣が吸い込まれるように彼女の身体に叩き込まれていった。
「ど、どういう事ですか!?何故です!?何故あなたはそこまで力が出せるのですか!?」
予想外、前世では有り得なかった展開に、尸陰の心に動揺が走る。
「私は、何時も手探りで探す主義なのよ。滅界翼媛に転身した時も、凶破媛子に転身した時も、何処かにあるはずと信じた力の欠片を一つにしようとしていたわ。それに、私は分かりかけてきたの。思い出したと言えば良いかしら、司狼丸を助けるだけじゃなく、数多くの人達の、分かり合えるという真実を確かなものにしたい。それが私を動かしていたって事を」
「分かり合えるという、真実……!?ふ、人間達は身勝手で自分達と異なる存在を否定し続けています。そして、他人の不幸を甘美な蜜として吸っているのです。正義を振り翳す輩も、結局は同じです。悪という烙印を受けた者達を苦しめ、正義の旗を後ろ盾として常に甘い汁を吸う、それが生きる者達なのですよ?そんな存在と分かり合って、何になるというのです?」
これに答えられるはずがない、絶対に詰まる、そう読んでの尸陰の問い。
その問いに、響華丸は真っ直ぐな瞳で即答した。
「生きる事にこそ、そうした罪に報いる理由があるわ。私達は他の生き物を殺し、その血肉を得て生きている。血肉を得ずとも、阻む者として様々な存在を殺すというのも珍しい事じゃあないわ。でも、だからこそその奪った命の分だけ生きる義務があると、私は思う。自己満足であろうと、分かり合い、傷つけ合い、そして屍を超え、支え合う……それを、私はあの子に許された時から持ち続けた!」
「!?……では、訊きましょう。今言った、『あの子』とは誰ですか?」
「思い出せない……でも、冷たい身体を得て生まれた私に、心の温もりを教えてくれたONIだというのが分かるわ」
少しずつ、真っ暗闇から何か人影が浮かび上がり、その影が段々とハッキリとしてくる。
それに伴って、響華丸は力が少しつ湧いて来るのを感じ、吹き飛ばされた鎧を、焼かれた衣と身体を、その力で元通りにしていった。
「あの温もりを、他の誰かに届けたい……司狼丸は、その中で一番温もりを与えなければならない存在だっていう事が、今でもハッキリと分かる。だから尸陰、あなたには絶対に、もう負けないわ!」
「!?まさかあなたは、前世の記憶を……!?いえ、そんな事はありえません!」
否定と共に振るわれた斧を、今度は剣を持たず左手で受け止める響華丸。
それによって青白い血飛沫が舞い、左手が青白に染まるのだが、ガッチリ握り締められた斧の刃はピクリとも動かない。
「一体、一体何があなたの心に干渉しているのです!?『あの子』が関わったのは、前世でも同じはずです!では、何なのですか!?あなたの心をそこまで強めているのは!?」
尸陰の、血走った目で投げ掛けられた問いを前に、響華丸は胸の奥底から温かい何かを感じ取っていた。
そして脳裏に、先程の影とは別なものが、今度は一人の小さな少女の顔が鮮明になって映し出される。
「……私の心に、もう一人いるのは……私を、鈴鹿を殺す事から止めた子……涙を流す事が出来ず、怒る事も出来ない代わりに、誰かの悲しみ、怒り、憎しみを理解してあげられる、そんな、仲間よ!」
「!?馬鹿な!現世における記憶は確かに抹消したのですよ!?切っ掛け無しに復元するはずが、有り得ません!」
知らぬ内に余裕を崩された尸陰の左手が直接響華丸の胸元に押し当てられ、そこから走った衝掌波が彼女を突き飛ばす。
その一撃は確かに胸元を覆う鎧を砕き、衝撃が背中を貫いて血が滲み出たのだが、響華丸は2,3歩下がって小さくよろめいただけに終わり、次にはしっかりと剣を構えて斬り上げを尸陰に叩き込む。
「こ、攻撃が……見切れるはずの攻撃が、何故当たるのです!?あなたの血の源が?いいえ、断じて有り得ません!あの女の血がたとえ司狼丸と同じ究極の力を秘めたとしても、それは有り得ない話です!」
「まだ力を隠しているかしら?あるいは、もう全てを出し尽くしたのかしら?どちらにしても、私が取るべき手は一つ。あなたを倒し、司狼丸を、この世界を救う事!!」
真っ直ぐな瞳を輝かせる響華丸に、尸陰の斧の連撃が襲いかかるが、彼女はその一撃一撃をハッキリと捉え、受け流していく。
それは尸陰が平常心を乱している為なのだろうか、あるいはこちらを油断させる為のものなのだろうか?
その問いへの答えを知るべく、という事も兼ねて響華丸は隙を見ての一刀を的確に叩き込んで行った。


「響華丸さんが、頑張っています!だったら私達も!」
響華丸が形勢を自力で覆した事は御琴はもちろん、天地丸達にも見えており、それが彼等の心から不安を吹き飛ばしていく。
「……見えたわ。あるいは、今の尸陰の動揺から、この空間に綻びが生じていたとも考えられるけれど」
「その方法は?!」
ミルドの言葉に、十郎太が問い掛け、その返答を、全員がしっかりと聴きに入る。
「時空関係の力を持つ人、そして前世からこの現世に、輪廻の環を超えて来た魂の持ち主、そして鬼神の力を、今見つけた空間の綻びに叩き込めば、私達はこの空間から外に、響華丸のいる世界に戻れるわ」
「俺達が霊穴を封印した時と同じだな?だったら……」
大和丸がそう意気込んで早速とばかりに動こうとするが、朱羅丸が待ったを掛ける。
「待ってくれ!俺達の中に、確かに時空を越えたりする人はいるけど、前世から現世にやって来れた魂って、誰かいるのか?」
その疑問に、誰もが答えに詰まり、大きな壁として表情を曇らせる。
しかしそれは束の間であり、本人が名乗り出た。
その人物は、螢だった。
「はいはいはーい!螢が、前世からちょっと毛色違いだけれど、現世に来れましたー!」
「!でも、斬光は前世ではあなたは居ないって言っていたのに?」
沙紀の疑問にも、螢は即答する。
「前世の終わりに、地獄門に八将神を封印した巫女さんが自分の魂の欠片と力を出して、それで現世に生まれたのが、螢なんです」
「「ええーー!?」」
此処に来て、衝撃の真実を知り、誰もが驚きの声を上げる。
エレオスはもちろん、ミルドもこれには驚かざるを得なかった。
「ジャドの企みをぶっ壊せる、普通に天才少女かと思ったら、何ていう秘密よ、それ!」
「あの巫女が散り際に第四の劫で行なったのは、そういう事だったなんて……つまり、彼女も全てを知っていたのね?」
「うん。夢の中で、巫女さんは凄く辛い思いをしていたの。前世、自分が封印した八将神が復活した時、その巫女さんは尸陰に動きを封じられて、動けるようになった時には司狼丸も響華丸も手遅れ状態だったの。それで、巫女さんは自力で不老不死になって、悪鬼達と最後まで戦った後、二度と悲しい事を繰り返さないようにって、螢の魂を現世に送った。尸陰は巫女さんの事を知らなくても、螢は巫女さんを通じて分かって来たよ~」
平然と自分の真実を話せるのは、感情欠落によるものだろう。
何にしても突破口を切り拓く準備は整った。
その上でオウランは真剣な表情で響華丸の戦いを見守る。
「今の響華丸ならば、たった一人でも尸陰を打ち倒せるが……それは現状での話だ。まだ安心は出来ない」
「だけど、私達が駆けつければ……!」
「ああ。響華丸の力は、ONIの力は無限に高まる……!」
沙紀、天地丸が意気を上げ、エレオスが御琴に微笑み掛ける。
「こうして、罪を犯したり償ったりって人生とは、誰も彼も異様な運命を背負ってるわねぇ」
「それが、生きている人なんだと思います。だからこそ、私達は前に進める。何処までも羽ばたけます!」
「さあ、皆!響華丸の元に帰ろう!!」
そう言い出したのは、音鬼丸であり、本人もそれに気付いて思わず赤面する。
我の強くなかった自分が、まさか此処に来て仕切るとは思わなかったのだ。
「……綻びに向けて、思いを、心の力をぶつけるわよ」
「は~い」
「行くぜ、皆!こんなふざけた場所の扉を、こじ開けるんだ!」
「待ってろ、響華丸!」
「やり過ぎて、あたしの分も取らないでね」
ミルドが見つけた綻びは、まさに一粒の光と、そこから走っている亀裂。
そこに螢が手を合わせる形で祈り、大和丸の号令と共にONI達は霊力を解放させ、江が螢を守る形で自身も力を解放する。
そして最後はエレオスが時空の力を解き放った事で、段々と空間の亀裂が大きくなっていく。
「「行けえぇぇぇっ!!!」」
霊力が頂点に達した所で、天地丸達は掛け声を力の限り上げて亀裂へと駆け出す。
すると、亀裂は空間全体を覆い、ガラスが砕け散る音と共に彼等は空間の外へと飛び出した。


「「!?」」
亀裂が響華丸と尸陰の頭上に、何もない場所に走り、そこから光が溢れ出す。
2人が思わず目を瞑って下がり、光が止んだ所でその亀裂のあったところを見ると、そこには天地丸達の姿があった。
「天地丸……御琴……沙紀、江、螢……!皆!!」
暗闇が一気に吹き飛ばされ、記憶が復元されていく。
響華丸は、その勢いによってか、一旦転身を解き、透き通った涙を流して震えていた。
「ごめんなさい、響華丸さん。心配を掛けてしまったみたいです」
「ううん……無事で、本当に良かった……!」
「おいおい、女だからってメソメソしてんじゃねえよ。らしくねえな」
再会に茶々を入れる大和丸だが、その頭に冬夜の拳骨が思い切り入った。
「友との再会に涙する響華丸も十分綺麗だ!その心もちゃんと理解しろ、大和丸!」
「いってぇ~……前にもこんな事があったような……」
「全く、2人して……ふふ」
大和丸と冬夜のやり取りに夏芽を初めとした全員がクスクスと笑う。
無論、それはすぐに止んで一同は真剣な表情で最後の敵、尸陰を睨んだ。
「……愚かだったのは、私も同じだったようですね。そうでしたか。螢という不確定要素が、この現世における全ての運命を捻じ曲げたのですね……本当に、迂闊でしたよ」
真顔でそう語る尸陰の視線は螢に向けられていたが、すぐに響華丸へと戻される。
「ですが、結果はまだ出ていません。響華丸、あなたを殺してしまえば私の勝ちが確定します。逆に私を滅ぼしてしまえばあなた達の勝ちとなります。本来ならば、先程のやり方で響華丸を孤立させて殺すつもりだったのですが、こんな時の為に最後の保険を掛けていたとは、我ながら用意周到です」
間違い無く、力を、手を隠していた。
それは記憶を蘇らせた響華丸や、天地丸達も睨んでいた事実である。
「先程の記憶操作、空間幽閉の力が今のあなた方の力で中和された以上、純粋に力のぶつけ合いで全てを終わらせます。さあ、目覚めなさい!ONIに倒されし、邪悪の存在達!そして束ねて生まれ変わった姿と力を以て、今こそ復讐を果たすのです!」
尸陰がそう叫んだ途端、周囲に低い怨嗟の声が響き渡り、黒紫色の塊が無数、床から現れる。
塊の中から浮かび上がった顔の一部は天地丸達にとって見覚えのあるものであり、その中には先の戦いで倒した大魔縁、清盛、久秀、三博士、餓王、斬光の顔もあった。
それらこそは、ONIが倒してきた者達の魂であり、大半が4箇所に集まると化け物の形を造り上げる。
1つ目は下半身が複数の節足を持ち、上半身には獰猛な鬼の顔が3つ、腕が6本という異形。
2つ目は芋虫めいた下半身に、機械の鎧を持った三つ首の蛇。
3つ目は、巨大な鬼の背中からもう1体僧侶を思わせる魔人の上半身が生えているというもの。
そして最後は、蜘蛛の下半身に蛇の頭髪、蟷螂の腕を持ち、肩口から百足が無数生えている鬼。
その4体の化け物が唸り声を上げて獲物を見定める間に、残りの魂が尸陰の身体に吸い込まれると、彼女の武具も変化した。
2対の翼は更に大きくなり、身に纏う鎧には髑髏の意匠が凝らされ、斧も禍々しいものとなっていく。
それ以外は変わりは無いものの、強力な力が発現している事は間違い無かった。
そして何時の間にか、最深部だった場所から、神殿の上空に出来上がった大きな陸地へと全員が転移させられる。
「全てが終わり、始まる……それを支配し、真なる理想郷を築くのは私であり、今の創造主ではありません。それを、今こそ示しましょう!」
「だったら、私はその野望ごと、あなたを永遠に滅ぼすわ。悲劇の繰り返しに終止符を打つために……」
響華丸が尸陰の前に立つと、その左右に螢とエレオスが、後ろに御琴がついて行く。
「最初に、ごめんね。助けるのが凄く遅くなっちゃって。だから、前世での巫女さんの願い、巫女さんが果たせなかった事を、此処で果たすよ」
「螢……ありがとう。あなたもまた、私の支え……絶対に忘れないわ!」
「さあて、尸陰……あたし達の王国を、子孫を弄った分、高くつくわよ!」
「何れ他の世界も私が支配する……言わばあなた達の王国は、入口に過ぎません。それも示しましょう」
螢とエレオスがそれぞれ響華丸と尸陰と話す中、御琴は化け物達の向こう側で、戦闘態勢に入っている琥金丸と伽羅の方を見ながら強気の笑顔を見せ、琥金丸と伽羅もそれに応える。
「(絶対に、生きて帰りましょう!)」
「(ああ。誰一人、欠ける事無くな!)」
「(お互い頑張ろうね、御琴!)」
御琴と互いに信じ合う琥金丸と伽羅。
2人は天地丸、音鬼丸、ミルドと共に三面六臂の魔王と向き合った。
「恐らく、あの姿は天輪乗王、天津甕星、サナト・クマラが一つとなったものだろう」
「一度倒した相手でも、尸陰の力で高まっているのが分かります。でも、僕達もこれまでの戦いを経て力を高めている!」
「何度蘇っても、俺達がそのたびに倒す!奴等の好きにはさせないぜ!なあ、伽羅!」
「うん!折角此処まで来たんだもの。あたしは、絶対に生きて帰る!琥金丸達と一緒に!」
「さあて、終わらせるわよ。この現世での、三世を懸けた大勝負を!無論、勝って終わりにするわ」

大和丸達影の新撰組は2体目の、機械の身体を持った三つ首の魔蛇を前にして剣を構える。
『こいつの姿は、確か俺達が戦った敵と似ている!』
『父上を、数多くの人々を弄んだ魔神だ。並みの強さではないぞ』
『でも、勝てない相手じゃない。あたし達が力を合わせれば、絶対に勝てるよ!』
『本当だったらあの女とやり合いたかったが、ま、此処まで来たからには響華丸に譲るぜ』
『わしらは、この魔神を打ち倒し、皆で生きて帰るのじゃ!』
天下五剣の言葉に、大和丸達も応える。
「三博士と、世の中を乱した魔神か!だが俺達は負けないぜ!」
「そうだ。私達には託されたものが、守るべきものがある!」
「あたし達の出せる力を、全部出して勝つ!」
「夏芽だけじゃない。俺達が守るべきものは、俺達が生きて守る!それが戦う意味だ!」
「幾度と無く蘇る三博士、そして魔神よ。これで最後だ!一族の、タミアラの、そしてリッシュの思いを受け取れ!」
全員は力の高まりで震えを払い、一斉に駆け出す。

二身一体の魔人と相対するのは、沙紀、江、朱羅丸、葉樹だった。
「司狼丸と外道丸、伊月さんに神無ちゃん、義父さん……数多くの命が、尸陰によって弄ばれたわ。道鏡に操られた小角や、尸陰に従った清盛、久秀もまた……」
「そいつらがこうして姿を見せるとは、哀れなもんだぜ……」
「だからこそ、眠りに就かせるんだ。俺達の手で!」
「憎しみも、恨みも、この戦いで全て終わらせますわ!恵比寿天・タキヤシャの娘として!」
全員が構える中、魔人はゆっくりと獲物を睨んで前進し、上下の両手に力を集中させた。

そして、残る醜悪な邪鬼は、メイア、オウラン、リョウダイが相手にする事となった。
「これは、ジャドが作った羅獣……!ジャドの魂が解放された今、この子達も解放する!」
「そうだな。我々の同胞だった者達、その供養こそが成すべき事!」
「この老骨に、何度でも鞭打たねばならんとは。時代はまだ余の武を求めているのが分かる。行くぞ、2人共!」
「はい!」「承知!」
羅士として転身した3人は、持てる力をしっかりと解放させる。

かくして、三世の命運を左右する、人々の知られざる最終決戦の幕が此処に上がった。



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あとがき

後一話!という感じの今回です。
ようやっと今までの謎が解き明かされ、後は最後の決戦を切り抜けるまで、となりました。
八将神が尸陰の生み出した存在というオリジナル設定ですが、この段階での尸陰のモチーフは、ギリシャ神話の混沌と争いの女神デュスノミアーです。
本当はエレオスのモチーフをデュスノミアーか、その母親で不和と争いの女神エリスにしようかと思いましたが、エレオスは『ラストプリンセス』という形にした事で尸陰が誕生した、という事です。
響華丸が尸陰の罠に嵌ったと思いきや、な展開は、今までの絶体絶命展開からの逆転よりも、という事で出しました。
集大成という事もあり、今まで倒してきたボスを合体させるという、お馴染みな展開。
黒の女神とリッシュが出て来なかった理由は、その末路故、と言っておきます。

次で最終話、是非ご期待下さい!

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