ONIの里

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隠忍伝説(サイドストーリー)

ONIΩ ~希望紡ぐ仔らよ~ 

桃龍斎さん 作

第七話 揺るがない闘志

睨み合いに入っていたオウランと覇天はどちらからともなく攻撃を始める。
駆け出し、繰り出し、何れも同時であり、オウランの拳と覇天の刃が互いにぶつかり合って激しい衝突音を響かせる。
重さではオウランが勝り、速さでは覇天が勝っている。
どちらもそれで差がつく気配は無く、掠り傷程度しか目立ったものは見られない。
それは両者が互角である事を示していた。
但しそれは互いに本気を出しておらず、様子見としての事であり、どちらも各々の今後を案じているようだ。
共通しているのは……
「(この戦いで響華丸が倒れてしまえば、我々の悲願が達成される……!あの方が蘇り、我らの理想郷が誕生する……!)」
「(恐らく、響華丸の勝敗こそが全ての戦いにおける要……だが、私は信じよう。あいつが自分の力でこの死地を切り抜ける事を。そして仲間達も同じように前へ進む事をな)」
迷わず前を見る事を選んだオウランが、次の打ち合いで先を取り、覇天に一撃を入れる。
その一撃を受けた覇天も不敵に笑いつつ、刃で彼女に連続の斬撃を浴びせる。
「その姿を持つONIを打ち倒す!それによって我々の時代が来るはずだった!だが、この世でもあくまで阻むとはな!」
斬撃はオウランの装甲を傷つけているかに見えたが、彼女の筋肉の鎧は鋼鉄が霞む程の強度であり、刃が当たっても火花が飛び散るだけ。
その余裕もあって、オウランは覇天の攻撃の合間を縫う形で右肩を突き出しての体当たりを繰り出し、彼を思い切り突き飛ばした。
「何っ!?我が刃をも防ぐとは……!」
「鬼神の血を受けたからと思うな。この鎧こそ、心身を鍛え上げて作り上げられたものだ」
続けてオウランの鬣が剣のように振るわれて覇天を殴り倒し、追い打ちが入って彼を地面に押し付ける。
「くっ……俺を此処まで追い詰める事が出来るとはな……しかし!」
次なる鬣の攻撃が迫る中、覇天は両腕の刃を伸ばし、光り輝かせてその鬣をバッサリ切り捨てて起き上がる。
オウランの方は、鬣を斬られた事には驚きも戸惑いもせず、只々この男、出来ると唸るのみ。
無論、一方的にやられるつもりは無いとして、彼女も装甲の一部を剣に変え、覇天の刃を受け止めた。
そこから今度は、刃同士の打ち合いを経て鍔迫り合いに転じる。
手数で上回る覇天に、一撃の重さで勝負するオウラン。
彼女は手を抜くつもりも無かったのだが、覇天が目を細めたのを見て、思わず後退してしまう。
彼の両腕がまるで数十、数百本に増えたかのように振るわれ、その腕の刃から無数、光の刃が飛ばされて来る。
それらを受け流す事になったオウランだが、これが覇天の狙っていた最大の隙。
一足飛びに間合いに入り直した覇天は彼女の脇腹に鋭く、刃を突き立てた。
これで一人、厄介な相手を討ち取れるやもしれない、そう期待しての事だ。
しかし……
「な……これは、ジャドも知らぬ事実か!?それとも……」
「ジャドは知略に長けていても、武勇の真髄を見極めていない。それだけの事だ」
入ったのは先端部分ほんの少しだけで、そこから僅かに血が流れ出ているのみ。
覇天の刃もヒビは一つも無いのだが、それでも彼は驚き、オウランの繰り出した剣をすぐさま横に避けても舌打ちするだけだ。
「響華丸が転身せずとも俺と五分に渡り合い、そして貴様が俺を押す……この世は、前世よりも周囲が強くなっているという事か……!とはいえ……」
と、覇天は何かに気づいたか、不敵な笑みを取り戻してオウランの脇腹を見る。
その脇腹に出来た小さな傷が大きくなっており、小さな湧き水の如く血が流れ出ている。
「流石に我が刃の真髄を、貴様は見切れなかったようだな」
「……認識を改めなければならないのはこちらも同じという事か。しかしそれ故に私は戦わなければならない。強さとは、己を、己が信念を貫く為のもの。違うか?」
「ふん。数多くの者達がそう口にして果てた。力、強さとは、支配する為のもの!正義である為の絶対条件!故にこそ、あの方は、我らの主であるあの方は神として、正義だ!」
隠すまでも無しとして本音を吐く覇天は瞬時にオウランへ刃の連撃を繰り出し、その装甲に傷を付け始める。
光り輝く刃は先程彼女の鬣を切り裂いた以上の斬れ味になっており、その攻撃の仕上げとして両手を胸元目掛けて突き出す。
「ぐはっ……!」
「これが、あの方より生を受け俺の!あの方より授かった力だ!!」
鋭い二つの刃がオウランの胸元を抉り、傷口から花を咲かせるかの如く血を噴出させる。
それで大きくよろめいたオウランだが、覇天が攻撃の手を止めた瞬間にその両手を掴むと、落としかけた剣を握り締めて思い切り彼の胴に突き立てる。
彼女もただ攻撃を受け続けていたのではなく、必殺の一撃を放てる頃合を見計らい、間合いを見切っていたのだ。
「あの方あの方と、余程己の主に心酔しているようだな。ならばその者の名前を聞き出さねばなるまい!」
「ぐっ……答えると思ったか!」
覇天も思わぬしっぺ返しに血を吐き、オウランの蹴り剥がしを受けて尻餅を突く。
此処でようやっとお互いに消耗が始まったのか、両者の息が少し荒くなり始めていた。


沙紀は人間の姿で、鋭く伸びた爪型の魔具=鬼爪の指輪を振って時貞配下の兵士達を迎え撃ち、葉樹も剣で術師達を切り捨てていく。
兵士達も決して力が弱い訳ではないものの、数を頼みとしている分、2人に対して有効打が与えられないでいた。
「……良かろう。皆の者、下がれ!私一人で葬ってくれる」
犠牲を最小限に抑えるという意味でも兵士を下がらせた時貞はゆっくりと剣を引き抜いて沙紀と葉樹の前に立ちはだかる。
そのただならぬ気迫に気圧されかけた沙紀だが、身構えはせず、鬼の爪を指輪に戻していた。
「時貞さん、あなたの事は聞かせてもらいました。誰かの為に戦っていた事も、体制によって苦しんでいた人達を救いたかった事も……そのあなたと、これ以上戦いたくありません!あなたはただ、自分達を見放した神様達への復讐の為に戦っているんでしょう?だったら尚更戦ってはいけません!」
「!?世迷い言を!」
沙紀の言葉に一瞬戸惑ったものの、時貞は瞬時に駆け、沙紀目掛けて剣を振り下ろす。
それをかわした沙紀はまだ攻撃を仕掛ける気配は無かった。
「義父が良く言ってました……憎しみは憎しみしか生まない。その先は破滅だと……あなたが憎しみで戦い続ける限り、あなたに大切なものを奪われた誰かがあなたを憎み返し、それが重なって誰もいない世界が出来てしまうんです。それがあなたの願いじゃないはず!」
「伝聞程度で、分かった口を叩くか!小娘!!」
次に振るわれた横薙ぎも飛翔してかわす沙紀は果敢に話を続けた。
相手が元々人間だからとかではなく、彼の戦う意味から『腕ずくで捩じ伏せるべき相手ではない』と悟ったからである。
「私は、憎しみとか正義とかで戦って来たんじゃありません……生きる為に、自分達の未来の為に必死に生きてきただけです。生き延びる事だけなら、誰かを憎まなくても良いはずです」
「沙紀……」
話を聞いていた葉樹も、何時でも飛び出せる態勢ながら、剣を納めている状態にある。
隠忍の本来の生き方としての説得を見守っているのだ。
次代の架け橋として、懸命に生きている人間と妖魔の混血の未来を。
「弓弦を憎んでいた時、自分自身が壊れそうになった時がありました。何度も、何度も全部壊したいっていう気持ちが込み上げて来ました。でも、それを解き放ったら罪も無い人間達がきっと傷ついてしまう、そんなのは嫌だって感じたんです。そして理解出来ました。先程の、義父の言葉を……!」
「破壊しなければ、己が大事なものを失う程の痛みを味わっていなければ、人間達も神々も延々と同じ過ちを繰り返す!それを見過ごせと!?」
間合いを詰める意味で歩く時貞の瞳は怒りの炎で燃え上がっており、その怒りが足にまで行き渡っているらしく、踏み締められた地面から蒸気が沸き上がる。
「そうは言ってません!でも、あなたは戦うべき相手を間違えています。自分の傷の痛みを理由にして、何になるというんです?そんなの、ただの八つ当たりになりかねません!」
「黙れぇっ!!」
怒りが爆発した時貞の剣が弧を描き、沙紀も守りの構えに入ってその斬撃を防ぐ。
だが時貞はそこで止まらず、連続の斬撃を放って彼女の全身に絡みつくかのような刃を浴びせた。
「お前達は己の生きる場所を守るべく戦った。だが、それでは世の中は平和にならぬ。迷い、苦しむ者達に救いの手を差し伸べる事を目的として、私は戦い続けた!それこそが人の生きるべき道だとして!体制の圧政から救われるはずだった!だが全ての歴史を見れば真実がどれほど醜いのか、良く分かるというもの」
少しずつ、沙紀の全身が血と傷で赤く染まっていくが、彼女は真っ直ぐ時貞の目を見ており、激痛に歯を食い縛って耐え続ける。
「危険な目に遭っていない者達は、自分達の身の安全を最優先し、虐げられている者達を見放している。そして責を問われても自分は関係無いと言い切るのだ。そして傷ついた者達が掴んでいた真実は体制の手で容易く踏み潰され、都合の良い事だけが公となる。体制もまた自分達の身の安全の為に嘘を吐き、汚れを他者に押し付け、自分が清潔であろうとしている!そうした者達が上に立っている限り、人々は苦しむのみ!」
「だから神様をも、殺そうというの?」
「そうだ!私は忘れぬ……誰もが神々に祈り、その加護を得て無敵だと信じてあの戦いを繰り広げた……だが、その誰もが傷つき、倒され、この私も孤立無援となって炎に包まれた……あの時程、神が憎いと思った事は無い……何故助けない?何故見放した?何故悪を罰しない!?それが今の私を形作り、そして冥府に堕ちた時に出会ったのだ!尸陰に!」
攻撃の手がその言葉で止まり、沙紀はそれを好機として時貞から離れつつ傷を術で癒していく。
「彼女は言っていた……神々も所詮は欠陥品、倒されて然るべき、とな。もし神が全知全能であれば、私の時代も、お前達の世界も平穏無事であったはず!だが実際は戦乱と弾圧に支配された地獄!その原因こそ神であり、この天地の創造主!その者を討ち滅ぼし、私達が新たな世界を作る為にも、この戦いがある!」
数多くの恨み、怒りを吐露する時貞の姿は、まさに憤怒の化身でもあり、悲哀の化身でもあった。
それが沙紀にとっては物凄く痛々しく見えており、同時に受け入れ始めてもいた。
彼がどうしても己を止められないようであれば、戦うしかないという事を。

「……あなたを見ていると、司狼丸や外道丸を、弓弦を思い出します……皆、そうして苦しんで、悲しんで、怒って……だから言っている事は分かるんです……でも、やっぱり私には、あなたの今のやり方が正しいなんて思えない……」
「人間に殺されてでも友愛を掴もうなどと、本末転倒な事を望むが隠忍か!?そうした考えを、私は偽善と呼ぶ!」
「……否定、しません。でも、やっぱり戦ってはいけなくても、戦わなきゃいけないんですね……」
息を整えて、沙紀は力を集中させ、その身を人ならざる姿へと変える。
「転身……香珠月姫!」
猫叉を模して、美しき赤の毛で覆われた下半身と不思議な模様を上半身と顔に持つ妖魔の姿。
それが沙紀の転身した姿であり、彼女は針のように伸びた鋭い爪を構えて時貞と向き合う。
「(また、禁を破っちゃうなんてね……何時だって、私は結局受け入れるしかない……でも、そこで終わらせない!)」
沙紀が覚悟を決めたという事実は葉樹にも分かっており、彼女の横に立って剣を抜き直す事でその理解を示した。
「沙紀、此処から先は一切の躊躇は無用ですわ。躊躇えば、死ぬのは己……」
「元より覚悟の上です!」
2人はそう言葉を交わした所で、時貞の一閃を避け、攻撃を開始する。
時貞軍の兵士達は援護として火の術や岩の術を放ち、矢も射掛けたりしたのだが、そこへ時貞が怒号が掛かる。
「手を出すな!」
「も、申し訳ありません!」
あくまで己の手で敵を討つ事を望む時貞は先程よりも鋭く激しい攻撃を繰り出す。
それらを時には受け流し、時には喰らっていた沙紀と葉樹だが、彼女らも数の利を活かした連携、波状攻撃で時貞に爪や剣を当てていく。
的確な攻撃は、2人合わせてようやっと時貞と互角に渡り合える状態である事を示すと同時に、沙紀も葉樹も迷い無く戦っている事を意味している。
時貞も己の気持ちを曲げる気配は無く、真っ向から攻撃を受けた上で反撃を繰り出すという荒々しい攻め方も見せていた。
そうした攻防が数分程続いて、時貞は全身に無視出来ない程の傷を負っており、沙紀と葉樹はそれより深めの傷を負い、息切れが激しくなっていた。
「……沙紀とやら、その姿を保つも限界であろう?己の破壊衝動に飲み込まれ、滅びることを選ぶか?それとも抗うか?」
隠忍の中には、長時間の転身をすると暴走しやすいという体質を持つ者がいる。
それを知っていた時貞の言葉に、沙紀は深呼吸をしてからの構え直しで応える。
「私は、人間じゃないけど、でも人間達と分かり合えると信じている……どんな目に遭っても、人間達を恨まないって心に決めた!だから、自分の力に飲み込まれはしない!」
内なる闘争本能を、人間として生きてきた経験からの慈愛で制御している沙紀の言葉に嘘は無く、時貞が斬り掛かっても流れるような動きで攻撃を受け流していく。
葉樹もその姿に感銘しつつ、時貞に円や弧、直線を描く剣の連撃を浴びせる。
「あなたは十二邪王としては、私利私欲に走っている訳ではない……ですが、一つだけ。神の加護に縋るだけで正義を示す事は、過ちですわ!」
「何!?」
「神が自分達を救い、敵に罰を与える、そんな都合の良い事を考えて何になるというのです?あなた達は、たとえ果てても自分達の思いを貫き、人を憎まない事を選ぶべきですわ!」
「人を見殺しにする秩序等、無法以上の偽善と知れ!」
剣を弾きながら抗う時貞は、大振りを繰り出して沙紀も葉樹も吹き飛ばし、そこから剣を掲げる。
すると空に暗雲が立ち込め、雷撃が2人を焼き焦がして地上に叩きつけた。
「くっ……諦めない!」
「ええ、それが隠忍、いえ、生きる者達の持つべき気持ちですわ!」
火傷に覆われ、身体のあちこちに痺れが残っているものの、沙紀と葉樹はまだ折れる気配は無く、時貞を見据える。
「やはり、死を以て理解しなければならないようだな……」
これ以上は時間の浪費としていた時貞は、剣を刺突の構えで構え、突撃態勢を取る。
まだ戦いを終える様子は無く、それならばと沙紀も葉樹も息を整えてその突撃を待ちに入った。


一足飛びで響華丸は間合いに入り、尸陰に一刀を見舞う。
尸陰はそれを軽くかわして響華丸の死角に回り込むと、巻き込むように斧を振るい、避けられる事を見越して左手から黒紫色の電撃を放つ。
そのどちらもかわし切った響華丸は尸陰の斧の先端に飛び乗ると、瞬時に斬撃を繰り出した。
だが、それに尸陰は驚く気配を見せず、逆に妖しげな笑みを浮かべ、目をカッと見開くだけ。
「甘いですよ」
やんわりと包み込むような尸陰の声と共に衝撃波が全身から迸り、響華丸は全身に火傷に似た熱い痛みを覚えて吹き飛ばされる。
それでも身体の自由はすぐに取り戻す事が出来ており、着地と同時に迫って来た尸陰の斧を真っ向から受け止め、空いた左手から光弾を彼女の顔面に叩き込む。
直撃を喰らった尸陰だが、精々前髪が乱れた程度だったらしく、氷のように冷たい笑顔をそのままに髪を直した。
響華丸の方は無表情で剣を振るい、時折尸陰に届くか否かの一撃を浴びせていく。
そうした攻撃を斧で防ぎ、後はかわし続ける尸陰はゆっくりと目を閉じながら後退し、響華丸の大きな踏み込みからの一撃を飛翔してかわすと、頭上から強烈な邪気を放つ。
「!?くっ……!」
直撃すれば只では済まないとして、すぐさまその場から離れる響華丸。
移動先には尸陰が回り込んでいたのだが、それも見越しての剣が僅かに尸陰の頬を掠めた。
「!クフフフ、素晴らしい……!倒しがいのある人ですよ、あなたは!」
転身出来なくとも此処まで響華丸が戦えている事に歓びを感じた尸陰。
彼女はそう言いながら斧を高速で振るって響華丸の身体を両断しようとする。
しかし響華丸の方はそれをしゃがんで避けると、突き上げるかのような斬り上げで尸陰の鎧に大きな傷を入れ、返す勢いで二の太刀を繰り出す。
その太刀を尸陰は斧で叩き落とし、続けて迫って来た蹴りも斧の長柄を盾代わりにして受け止める。
威力は剣程ではないが、それでも尸陰の身体を僅かに退かせる事は出来ていた。
「やりますね。この現世の戦いも見て来ましたが、あなたはやはりその迷いの無い剣が魅力的です」
続けて競り合いに入った2人は火花と共に言葉を交わす。
「私が強ければ強い程、それがあなたにとっては好都合という事ね。手に入れる力の面で、そして私が味わう絶望の大きさという意味で」
「察しが良いようで。しかし私にとって一番の好都合は、あなたが前世の記憶を全く持っていないという事です」
「何が言いたいの?」
「全ては我々の手に……その上でもう一度あなたを殺せるという事です」
競り合いの決着はつかず、両者は互いに弾かれて間合いを取り直す。
余裕があるのは尸陰の方であり、彼女は薄ら笑いと共にこう続けた。
「前世のあなたは、たった一人で大切なものを守ろうとしました。その大切なものとは、自分の弟になるかもしれない存在……でも、あなたは全く知りませんでした。自分が彼を追い込んでいたという事に」
「……まさか、司狼丸の事を!?」
まるで昔話の語りのような話、そこに見え隠れする真実。
その真実に響華丸の瞳が僅かに揺れ、それを見逃すはずの無かった尸陰は斧の振り下ろしで脳天を断とうとする。
間一髪、防御の間に合った響華丸だが、斧の重みで両足が地面に打ち付けられるように沈み、次に放たれた横薙ぎで吹き飛ばされてしまう。
「そう、司狼丸……彼は本当に愚か者でした。戦いたくないと言いながら戦い、人の為と言いながら結局は自分の為に戦う。そして殺される……前世でそうだった彼の事です。この現世でもそうでしょう?」
「……っ!」
受け身を取って地面への激突を免れた響華丸。
その耳に尸陰の言葉がジワリと入り込み始めた。
「私が、司狼丸を傷つけた……!?」
「ええ。あなたの励まし、確かに司狼丸には届いていましたよ。でも、あなた以外に味方はおらず、皮肉な事にその最後に残った仲間であるあなたが、彼を絶望させました」
「私の……所為で……!?」
響華丸の心臓の鼓動が高まるのとは裏腹に、身体中の血液が熱を失い始め、身体が震え始める。
それに伴い、段々と防御と攻撃に乱れが現れて来た。
「あなたは必死に足掻き、戦い続け、傷ついたのですが、そんな姿を見て司狼丸は自責の念に苛まれたのです。そして、母の鈴鹿に殺された後に力を真に覚醒させて甦り、戻ったのも束の間、あの方と刺し違える形で死にました……この現世の司狼丸も、何れそうなるのは目に見えている事です」
「司狼丸……」
動揺が身体の動きを封じ、そこへ尸陰の容赦無い斬撃が炸裂する。
連続で入った斧の攻撃に、響華丸は全身が斧による傷に覆われていき、最後の横薙ぎで地面に突っ伏してしまう。
「そして、あなたはそうした無様な姿をして私に倒されるという運命にある、という事です。そして此処であなたが死ぬ事でこそ、あの方は復活し、真に司狼丸が絶望します。これが私達の狙いなのですよ。それにしても、流石に堪えたみたいですねぇ、今の話は」
「ぐぅ……私が……私が全部……悪い、と……!?」
身体の震えが止まらない中、何とか顔を上げて尸陰を睨む響華丸。
その顔は驚きと戸惑いに凍りついてはいたが、醜く歪んでいないのが余計に尸陰にとっては心地良いものに見ているようだ。
「ええ。ぜーんぶ、あなたの所為ですよ。流石に根は冷静なだけに、道鏡の人形らしく表情の動きが最小限な顔をしていても、その瞳は本当に正直ですねぇ。ウフフ、その顔、その瞳、その震えが見たかったんですよ、私は」
小馬鹿にしたような言い方で尸陰は高らかに笑い出す。
「所詮、隠忍の心なぞその程度という事です。隠忍の救世主も、その救世主を救おうとした者も、結局は否定され、大事なものを失ってしまう……それが、運命です」
此処まで傷つけ、追い詰めれば後は響華丸を殺すだけ。
その念も込めて、尸陰は斧を振り上げ、まだ立ち上がれないでいる響華丸の首目掛けて思い切り振り下ろした。

ザシュ……!

肉が切り裂かれ、血が噴き出す、戦いにおいては有り触れた音。
だが、響華丸と尸陰との戦いの場から発せられたその音に、オウランと覇天、沙紀、葉樹、時貞達が手を止めてそちらを見る。
どちらかが相手を倒した、そうした音であり、沙紀、葉樹、オウランは不安に襲われる。
そしてしっかりと音の出処を目に捉えた時、一番に驚いたのは覇天と時貞であった。
いや、正確に言えば当事者の尸陰であろう。
それを裏付けるかのように、それまで彼女にあった冷徹にして妖しげな笑みが全く無くなっていた。
確かに自分は響華丸を追い詰め、確実に仕留めれる状況にあった。
それなのに、自分の斧は響華丸の首では無く、左肩に入っており、しかもそれが全く抜ける気配がしない。
更に、尸陰は自分の脇腹に生温かいものを感じてそちらを見ると、衝撃と共に顔が驚きで凍りつく。
脇腹を覆っていた箇所の装甲が砕け、衣も切り裂かれ、そこに響華丸が剣を突き刺していたのだ。
「な、何故……?!」
「……前世は前世。今は、今よ……!此処で抗っているのは、私一人だけじゃあない!」
己の身体に入っていた斧を抜き、相手に突き立てていた剣を引き抜いた響華丸は術を使わずしてその傷口を癒していた。
彼女自身、身体に温かく、強い力を引き出せている事を理解している。
その理由も、しっかりと口にして……
「沙紀、ありがとう……あなたのあの気遣いが、夏芽のあの言葉が、こんなにまで力になるとは思わなかったわ。だから、私は躊躇わない……!」
一呼吸と共に、響華丸は力強く、誰にとっても頼もしい笑みを見せる。
それは尸陰にとっては予想外な事である。
「因果が変わっているという事ですか……あの時は沙紀ですら見放していたのが、そうですか……その沙紀が、この現世ではあなたの仲間に……それも、ただの仲間では無いという事ですか」
一歩、また一歩と下がる尸陰だが、次の瞬間には再び余裕の笑みを取り戻してみせた。
「そうした持ち直しも見せるとは、実に愉快で素敵ですよ、響華丸!ああ、そんなあなたを、あなた達ONIの心をズタズタにする事で、ますます生贄として上質になるというものです!素晴らしい!本当に素晴らしい!!」
「……あなたがそうやって嘲笑っていても、私達は司狼丸を救い出す……!たとえあなたの望んでいた、私と司狼丸だけの状態になったとしても、諦めない。この現世での司狼丸が望む平和の為にも、あなたを倒さなければいけないわ……」
笑みを消して真剣な表情になる響華丸の身体が、光り輝いて鬼神の鎧を纏い始める。
「そんな馬鹿な事が……!」
「響華丸……!」
その光景に覇天が驚き、沙紀が歓喜の笑みを見せ、時貞が少し面白くない様子で歯噛みする。
「流石は私を負かした人……底が知れませんわ」
葉樹がそう感心する内に、響華丸は転身を終えていた。
美しい輝きを放つ、凶破媛子への転身を。
それを見届けていた尸陰は全く表情を変えていない。
即ち、余裕を全く崩していないようだ。
「もう話しても良いでしょう。我々十二邪王の目的、それは司狼丸が刺し違えて封印した、前世における金剛様の復活!出会った事は無くとも、ご存知な方もいると思われますが、北斗七星に輔星を加えた八つの星の力を持つ、大凶星八将神が一人です。復活の時は近づいています。金剛様が復活すれば、その時点で司狼丸が持つ力は金剛様のもの……その時こそ、全てが地獄という名の理想郷に変わります。たとえ全てが災厄の地獄に変わったとしても……」
突如、その余裕にヒビが入る。
響華丸が瞬時に一刀、尸陰に一撃袈裟斬りを浴びせていたのだ。
それによって左肩から真紅の鮮血が鋸のような軌跡を描いて空を舞い、尸陰も流石に堪えたらしく、笑顔が消えて代わりに苦痛で歪んだ表情を見せる。
「答えは変わらないわ。どんな相手であれ、どんな運命であれ、私は突き進む……!何時だって、それは変わらないわ」
「違います……こんなにまで違う響華丸は、有り得ません……!確かに、あなたは御琴と戦い、敗れ、敵から友へと生まれ変わりました。それは前世でも同じ……しかし、何があなたをそこまで変えたのです?異なる時代、異なる世界のONIとの交流?いえ、そうではありませんね……」
「言ったはずよ。前世は前世で、今は今。だから、前世のような結末が、割符を合わせたようにこの現世で成り立つとは限らない。違うかしら?」
「……成程、良く分かりました……私とした事が、少々お遊びが過ぎたようです。もっとも」
と、響華丸を再び嘲るように笑みを取り戻して続ける尸陰。
「前世には無い結末を、何れお見せする事になりますけれども。そう、金剛様復活!現世において金剛様は消滅しましたが、前世で封印状態にある金剛様を蘇らせれば、全てが終わります。その場所、時空の果ての地へあなた方を招待しましょう」
「つまり、決戦の場ね……」
「ええ。我々の本拠地はまさにそこです。月並みな言葉で申し訳ありませんが、そこがあなたの現世における墓場となります。仲間も無論生贄にして差し上げましょう。あなた方が来るのを、私達は気長にお待ちしていますので、何時でもどうぞ。では……」
今回の戦いはこれでおしまいとばかりに、手を振り上げて退き始める尸陰に、覇天も時貞もやむ無しと頷き、時貞の合図で兵士達が撤退準備に入る。
「尸陰、こちらも月並みな言葉を返すわ。私達は、絶対にあなた達を打ち倒し、司狼丸を金剛から救い出してみせる……!」
「ふふふ、精々頑張ると良いでしょう……次こそが、お互いに今生の別れとなりますから。では皆さんも、ご機嫌よう……」
話している間に、沙紀、葉樹、オウランが周囲を警戒していたのだが、無言で覇天も時貞も、兵士達も、既に開かれている黒紫色の門を潜って去っている。
そして最後に残った尸陰も門の向こう側で見える黒紫色の空気の歪みの中へと消えていった。

敵の気配が完全に消えたのを確認して、響華丸、沙紀、オウランが転身を解く。
それからしばらくの間、響華丸と沙紀はじっと見詰め合っていた。
司狼丸を信じて、助ける事を目的とする。
それが2人の共通点であり、お互いに理解しているようだ。
「やったね、響華丸……力を、取り戻せて良かったわ」
「私も、自身を取り戻せたなんて、夢にも思わなかった。あなたが来なかったら、私は今頃大和丸達を許さず、尸陰に首を取られていた……沙紀、もう一度言わせて。ありがとう……」
心からの笑顔は、響華丸の本当の気持ちであり、沙紀も何かから解放されたのであろう、普段は少々ぎこちなかった笑顔が、より明るいものになっていた。
「……これが、私に出来る事の一つ。司狼丸を助けられなかった事への罪悪感じゃなく、最後に残ったしじまの里の隠忍としての、けじめだから」
もう、何も迷う事は無かった。
自分の後ろ、そして隣には仲間がいる。
前に突き進み過ぎて孤立する恐れはもう、無くなっていた。
「さあ、戻ろう。メイア達も無事であると信じたい」
「そうですわね。では……」
光り輝く柱が作り上げられた事から、監査局本部の時空間転移に異常は無いらしい。
それもまた、4人を安心させており、何時もと変わらぬ様子で彼女らを運んで行った。


日が沈んで、月が辺りを照らす夜の下。
間合いが狭まり、剣の切っ先が触れ合うか否かでピッタリと動きを止めた琥金丸とミルド。
2人は月が雲に隠れ切ったのを合図に、爆ぜるように攻撃を始めた。
琥金丸は重さと正確性を重視して一撃ずつの一刀を放つのに対して、ミルドは細身の剣の特徴たる速さと手数を活かした連撃で応える。
軽さではミルドの方が上であり、頭上を取っての襲撃、死角に回り込んでの打ち込みをしつこく仕掛けていくのだが、琥金丸も先に手合わせをした事が経験となって対応していた。
「ふ、流石にこの段階でも此処まで行けるとはね。最初に会った時よりもずっと仕上がりが良いわ」
「お前の方こそ、相変わらず殺気のねぇ剣だ。おかげで逆に読みにくいぜ」
剣と共に、真顔で交わされる言葉。
双方の言うように、どちらも全く譲らない戦いを展開しており、今の所新しい傷が入るという気配も無い。
「さあ、次は見切れて?」
一旦離れて間合いを取り直そうとする2人だが、今度はミルドの方から剣を刺突の構えで突き出し、琥金丸が迎え撃つべく守りの構えを取る。
その途端、ミルドの剣の切っ先から矢の雨の如く無数の風の刃が走り、琥金丸が防いだもの以外の刃が彼の身体を切り裂く。
そこへ間髪入れず、ミルド自身の剣が琥金丸の首を捉えようとするが、彼女の目の前に琥金丸の左肩が突き出された事でその剣がかわされ、顔面に思わぬ一撃を貰う。
琥金丸はその肩による体当たりでよろめいたミルドに、掬い上げるような斬撃を浴びせる。
寸での所で地面を蹴り、大きく後退する事で直撃を避けたのだが、それでも服に僅かな切り傷を作り、その向こう側に見える肌にもうっすらと赤い線を刻んだ。
「ん、見直したわ。やっぱりそれくらいのものでないと、父を倒したのがまぐれで片付けられてしまうもの」
軽微な傷をすぐに癒やし、追撃しに来た琥金丸の振り下ろしからの右、横薙ぎ、上下への揺さぶりという連撃を捌いていくミルド。
ただ、その防御は決して遊んでいるかのようなものではなく、真剣に攻撃を受け流しているというもの。
ミルドが上を取ろうと飛翔すれば、そこへの対応策として琥金丸は踏み込みからの斬り上げ気味で彼女の剣を受け止め、捻りを利かせて彼女を地上に引き倒しに入った。
その勢いでミルドも初めて顔面を地面に叩きつけられるが、落下の衝撃・反発を利用して琥金丸から少し離れ、両手持ちからの一閃を繰り出す。
その一閃は琥金丸の剣でも防ぎ切れず、筋肉を硬直させる事でやっと傷を浅く済ませられる程のもの。
「……顔を汚されるのは嫌いじゃないわ。それにしても、そろそろ身体も温まった頃合……本気で行くわよ」
「そうか、あんたも……」
ミルドが剣を納めれば、琥金丸も剣を納めて雷皇童子に転身する。
「さて、実戦で使うのは初めてになるけれど、あなた達に倣ったやり方でやらせてもらうわ。転身」
「「!!」」
「あ、衣を取った」
音鬼丸と朱羅丸はミルドの口にした言葉にまさか、と驚き、螢もミルドの見えざる正体がようやっと見えたという意味合いでそう言葉を漏らす。
ミルドは漆黒の霧めいたものを全身から放ち、霧で作り上げられた黒い球体に包まれるとその中で一旦一糸纏わぬ姿になり、影姿ながらも肉体を変容させていく。
そして黒い球体が無数の蝙蝠(こうもり)になって飛ばされると、中から赤黒く、少女らしさをそのままに鍛え上げられた肉体を持つ化け物が姿を見せた。
それこそが、ミルドの本気の姿であり、血の如き赤い瞳は変わらず、漆黒の翼が広げられ、衣服は肌にピッタリ張り付いた紫色のレオタードとなっている。
耳は蝙蝠のそれらしく大きなものになり、青黒い髪が小さな翼を形作って耳を覆い、閉じた口からは鋭い牙が見え隠れしている。
そして爪は指から短刀のように伸びているのだが、ミルドの意志で出し入れが出来るようだ。

「私が隠忍という事実を知ったのは父の死からしばらく後。詳しい事は私を打ち負かしてからにしなさい」
「ああ、そうさせてもらうぜ!」
転身した2人は徒手の構えから睨み合い、どちらからともなく攻撃を始める。
最初は拳と爪の打ち合いだったのだが、そこから速度を速めたのか、ミルドが琥金丸の攻撃をかわし始める。
大きく広げられた翼が何かしら牽制を齎しているのか、琥金丸も深追いを避け、反撃を警戒しながら一撃一撃丁寧に繰り出す。
「折角の全力よ。損も失望もさせないわ」
一瞬の隙、それも気の緩みの有無を無視した、ほんの僅かな隙を見抜いて伸ばされたミルドの翼。
鞭の如く攻撃を受け流し、切り裂き、弾くという力を秘めたその翼は琥金丸を突き飛ばし、追撃として地面を切り裂くように延びる。
「こっちもさ!何の為に此処まで来たんだか!」
「っ!」
飛ばされた琥金丸が虚空を蹴り、その反動で突進した事により、翼が空を切り、彼の接近を許してしまうミルド。
変幻自在な翼と言えど、懐が弱点である事を即座に見抜かれたのだが、彼女はそれに対する僅かな驚きをすぐに打ち消し、琥金丸の拳に己の拳を合わせる。
しかし、拳の重さに勝る琥金丸の方が競り勝ち、ミルドは拳を弾かれたばかりか大きく仰け反り、翼も強制的に元の大きさにまで戻された。
琥金丸は立て続けに彼女に連続の拳を叩き込み、その最後の一撃として雷光と突風を伴った正拳突きを彼女の胸元に突き刺す。
この手応えに、それまで押していると実感していたはずの琥金丸は違和感を覚え、すぐに離れて彼女の様子を見に入る。
彼の睨んだ通り、ミルドは直撃を喰らってもさほど大きな傷は見られず、少々息を切らした程度だ。
「烈風拳が入ったにしちゃあ、浅いと思ったぜ。防御の結界をあの攻撃の中で張っていたとはな」
己の拳を見ると、自身が放った電撃とは別の電流が拳から流れ出ており、その手が幾分か青白い血で滲んでいるのが良く分かる。
ミルドの方も、痣に手を触れてその傷を癒やし、長い髪を梳かすと自然体の構えに入る。
「様になっているわね。これだから真剣勝負は、気合が入るわ」
自然体のまま疾駆したミルドに、琥金丸も咄嗟に蹴りを繰り出し、奇襲を防ぐ。
そこから両者は拳と蹴りを交錯させていくが、ミルドの方が俊敏な動きが出来て翼がある分、制空権は彼女が手にしているようだ。
だが、頭上を取られても琥金丸は戸惑わず、地面を蹴って飛翔し、ミルドが放つ黒紫色の小さな刃を拳で弾いていく。
そしてミルドの上を逆に取った瞬間、彼は右足を大きく上げ、まるで太刀を振るうかのように力一杯ミルド目掛けて振り下ろした。
「くぅっ!!」
此処で初めて、直撃という直撃が入ったのだろう。
ミルドの表情がようやっと苦しそうなものになり、そのまま地上に叩きつけられる。
「うおおぉぉっ!!」
逃がすまいと急降下した琥金丸。
その拳を、地面と激突していたミルドは横へ跳んで避け、翼を蔦の如く伸ばして琥金丸を絡め取り、絞め上げに入った。
「こんなもんで、負けるかよ!」
琥金丸も力を入れてその拘束を打ち破り、翼を掴んでミルドを引き寄せると、再び烈風拳を彼女の胴に突き立てる。
「っ!!効いてはいるけど、耐えられない攻撃じゃないわ」
ミルドも直撃を受けた痛みで苦悶の表情が更に強いものになったが、彼女は自身に突き刺さっている琥金丸の拳を掴んで彼の体勢を崩す。
その状態から鋭い爪による連撃を浴びせ、琥金丸の装甲をズタズタにしていくが、彼もその爪に耐え、ある程度攻撃を喰らった所で、防御が解かれたミルドの鳩尾に拳を突き刺す。
その一撃を起点としてか、彼女は思い切り血を吐き出し、その体を支える膝が笑い始めた。
「くっ……ふふ、まだ戦い足りないわ。私が降参するには、押しが足りないわよ、琥金丸!」
不敵な笑みと共に踏ん張ったミルドは両手の爪を煌めかせて琥金丸の両脇腹に突き刺す。
装甲の隙間を縫う形で入ったその攻撃に、刺さった部分から青白い血が流れ出、琥金丸も唸り声を低く上げる。
ミルドはその状態から一気に両手を引くことで彼の脇腹から胴にかけて5対の青白の線を作り上げ、次に交差させた両の手刀で彼の胸部を切り裂く。
「こうでないと、十二邪王が語れないってのは分かった!だからこそ、俺も貫かせてもらうぜ!自分のやり方を!!」
「!?」
手刀での斬撃は疾駆によって背後を取る事も考えていたミルド。
だが、琥金丸はそれを見越し、背中をミルドに見せたままその長い髪を掴み、背負い投げに似た形で彼女を前方へ引き戻す。
それにはミルドも予想していなかったらしく、投げ飛ばされて尻餅状態になった彼女は一瞬だけ頭が真っ白になる。
すぐに我に返っても、琥金丸からすればその一瞬は隙を突くに十分な時間であり、ミルドが身を起こすより早く彼は追撃に入っていた。
「……これは……」
左右のどちらかに転がって回避しようと思っていたミルドは再び膝が笑い始め、大きく転倒する。
「今の投げで、私の顎に一撃を……!」
ミルドを正面に戻した際、琥金丸は彼女の顎に一撃を入れており、その衝撃が彼女の五体を襲っていたのだ。
そうした事実に今更ながら気づいたミルドは反撃や撤退が間に合わず、琥金丸の左拳を顔面に喰らう。
「がっ……」
眉間に命中した事でそこから赤の鮮血が噴き出、その衝撃で大きく、砂像が崩れるかのように膝から倒れ始めるミルド。
辛うじて片方の膝を立てる事は出来たのだが、目の前に琥金丸が立っており、何時でも攻撃を仕掛けられる準備として、拳を眼前に突き出している。
勝負あり、そうした様子は静観していた音鬼丸達からも読み取れており、後は次の判断、動向を見守るのみである。

それから十数秒後……

「……完敗よ。で、どうする?」
沈黙を破ると同時に転身を解いたミルドに、琥金丸も拳を下げて答える。
「色々と訊きたい事があるし、何よりお前は最後の最後まで俺に対して憎しみも殺意も見せなかった。だから、殺さない。拘束はするが、殺しても何も変わらないのは分かっている。これが、答えだ」
言い終わって、ミルドがそれを受け入れる意味で表情を落ち着いたものへ変えると、そこでようやく琥金丸も転身を解いた。
「琥金丸……!」
「伽羅……約束、キッチリ守ったぜ!」
完全に戦闘が終了した所で、伽羅が琥金丸に駆け寄り、ミルドも自分から望んで音鬼丸、朱羅丸、螢に拘束される。
「あいつ、答えがハッキリしてたんだな。殺したくない、殺さない理由を……俺もそれをハッキリさせてれば、深青はあんな事にならずに済んだってのに……」
状況は納得出来たが、自身を振り返って気持ちが沈みかけた朱羅丸に、ミルドは否と首を振る。
「数多くの人達、その誰もがぶつかる事になる壁みたいなものよ。琥金丸がそうだったように、あんたも乗り越えられるはずだわ」
「ミルド……」
「じゃ、帰ろ~」
少し緊張した様子の朱羅丸、その心を解きほぐす意味で螢が前に出、展開された光の柱の中へ入る。
琥金丸と伽羅も一先ず帰還するべく、最後に柱の中へ入り、そこから音鬼丸達と共に時空監査局へと戻りに入った。


時空監査局本部は、敵の襲撃で多少の被害はあったものの、監査局の機能そのものは無事であり、響華丸達は誰一人欠ける事無く戻って来ていた。
新参、それも元々敵だったり、死んだはずの存在がやって来た事には誰もが驚きを隠せなかったが、改めて伽羅、冬夜、エレオス、ミルドが大広間の奥で並び立ち、ミルドが周囲を一回り見渡した所で話を始めた。
「さて、何処から話せば良いかしら?」
「まずは、俺達が倒した吸血鬼と、お前との関係だ。俺はあんたの父親の仇とされて当然のはずだったのに、その異様に落ち着いた様子が気になってな」
琥金丸が一番に気にしていた部分、そこからミルドは頷きと共に話を始める。
「大方は聞いての通り、私が父の敵討ちとして琥金丸を狙っていた、と思っているでしょうけれど、実際は違うわ。むしろ、私と父は敵同士の関係だった。信じるには至難な事だけれど、私は人間と、あんた達の言う西洋妖怪の間に生まれた存在。当時私と母は妖怪と触れ合った者の運命として、静かに闇の世界で生きるか、あるいは人間と交流するかの何れかを望んでいたわ。母が死んでも、それは変わらなかった」
「吸血鬼の野望を止めようとした事もあったんだな?」
「ええ。でも、その時の自分は、ただ単に人間と人外の混血としか考えてなくて、隠忍の力が自分の中にあるなんて気付かなかった。そういうのもあって、私は父と戦い、敗れて死んだの」
「そんな事が……」
実の親子の戦いがあちこちで起きていたという事実に、御琴は心を痛める。
「死んだ私は、地獄に落ちるかと思ったけれども、ある組織に拾われて蘇ったわ。それが三世伝承院(さんぜでんしょういん)。前世の出来事を記録、現世の状況を監視、そして来世への引継ぎを司る、それら三世、つまりありとあらゆる世界の監視者に等しい人達の集まりよ」
「それは時空監査局をも超えているという事ですの?」
前世と来世にまで関わっている事に、もしやという思いを抱く葉樹。
彼女の考えを、ミルドは肯定しながら話を続けた。
「制限付きで時空間を移動出来るけれども、死者の中で適した者達を蘇らせ、組織の一員とする事が出来るわ。ただ、必要以上の干渉は許されないけれどね……私も選ばれた存在のようで、今回は三世に悪影響を及ぼす十二邪王の監視の為に送り込まれたわ。言わば、スパイのようなものよ。同時に、この時私も隠忍の力に気づき、目覚めさせる事が出来た。ジャドを尸陰の指示で蘇らせたのは、私だけれどね」
「……」
沈黙はあれど、ジャドに関係する者で怒りの表情を見せる者は誰一人居ない。
理由は分かっていたが、それでも敢えてミルドは訊く。
「……怒らないのかしら?言いたい事があれば、この場で」
問いに答える者として代表を買って出たのは、メイアだった。
「……ジャドは、確かにやっちゃいけない事をし過ぎているけど、心を折らない限り、きっと何処かで蘇ると思っていたから、それが出来るチャンスに巡り会えて、むしろ感謝しているわ」
「そう……じゃあ、次。伽羅と冬夜について、実は2人も三世伝承院に選ばれた人なの。ただ、伽羅については心の闇が尸陰達の目に止まったみたいで、久秀に魂を奪われ、ジャドの手で蘇らされたわ。琥金丸がしっかりと戻してくれたけれど」
「兄さん、選ばれたって話は本当なの?」
「ああ。あの後、使いの者に連れられ、今回に関する説明を受けて、俺は戦いに備えての訓練に励んでいたんだ。十二邪王を阻止するっていう戦いに備えてな」
「これで、辻褄(つじつま)が合うぜ。けど、まさかまた会えるとは思わなかったな」
全てに合点が行った大和丸達は改めて、仲間の復活に安心と喜びの笑みを浮かべる。
琥金丸と御琴も、伽羅と無言ながらも意思疎通が出来上がっているのか、自然と笑顔が見えている。
それを見届けながらも、ミルドの話は続けられた。

「そこにいるエレオスは、伝承院が説得したのよ。ONIの文明、その最後の王女と事を構えるより、この異変の解決において力を借りたいから、伝承院の使者が送られたって事。彼女の封印はしっかりと伝承院が確認していて、緊急という事で起こしたという事」
話題を振られたエレオスは鼻で笑いながら前に進み出る。
「無理矢理起こされた所為で、実力が御琴より少し強い程度で引っ張り出されたわ。まあ、十二分に戦えればそれで良いんだけれどね」
「今回は味方、仲間ですね」
御琴は何時までも引き摺るつもりはなく、落ち着いた様子でエレオスを見ており、メイアも今は戦うべきでないとしてじっとエレオスを見詰めていた。
「邪魔者を叩き潰すのが最優先。それに従ったまでよ。色々あれから考えて、あたしが一番やりたい事って何なのか、何があたしの納得行くものなのかを、殺したり死なせた奴等の分も生きて探さなきゃって思ったけどね」
素っ気無いようで、重みがあるエレオスの言葉に、誰も反論する気はない。
彼女はかつて、自分達を打ち倒した者達への復讐として様々な悪事を行なったのだが、それを責め続ける権利は誰にもありはしないと、暗黙の了解があったからだ。
沙紀は、弓弦の親を初めとした多くの人間達を喰い殺した鈴鹿や、暴走の為に人間達を殺してしまった司狼丸、人間への憎しみに生きた外道丸の事を考えていたから尚更である。
御琴も、佳夜として多くの人達を殺してきた過去と向き合った己とエレオスを照らし合わせ、彼女が業と向き合っている事を信じている。
それでも不服ならば、許せない、虫が良過ぎるというのならば、という意味合いでエレオスは真剣な表情でこう言い切った。
「全部片付いたら、あたしを殺さないと気が済まないとか、罰を下さなければならないとか、そういうヤツの攻撃は幾らでも受ける。無論あたしは命乞いはしないけれど、死んで楽になるつもりもない。一生呪われ続けても構わない」
この覚悟は本物であり、瞳も嘘を言っている気配が無い。
それらを含め、エレオスの参戦に異論無しと見て、ミルドは次の話に入る。
「……そして、これが恐らく一番重要な事だけれど、司狼丸について、彼の持つ可能性や危険性が永い間議論と審査が続けられていたわ。時空童子と呼ばれた彼は日本の歴史を変えるだけじゃなく、並行世界、ひいては三世に影響を及ぼしかねない存在だったの。そしてつい最近、結果が出たわ」
「……その結果は……?」
司狼丸と一番関係しているだけに、不安が誰よりも大きい沙紀。
そんな彼女の耳に入ったのは、温かい光を思わせるものだった。
「彼は人間と妖魔との融和を求めている方だった。彼の今までの行為も、平和を第一と考え、支配を望まない、そうした考えに基づいての事という意見で一致したの。つまり、単刀直入に言えば無罪。助けて欲しいという依頼なら応じるわ」
「あ、ありがとうございます!でも、現世の司狼丸は……?」
そこからが、真の本題であった。
ミルドは沙紀、そして響華丸の順に視線を移した後、全員を見据え、一呼吸置いて話す。
「十二邪王は、前世で八将神の金剛と刺し違えた司狼丸の魂を捕らえているわ。当然、時空を超える力がその魂の中に内包された状態の、ね。そして厄介な事に、彼の魂は金剛の魂に取り込まれている状態にあるの。刺し違えた時に司狼丸の魂の中に潜り込んで、休眠状態になっていると考えて良いわね」
「「!!」」
その説明に、響華丸と沙紀が第一に衝撃を受け、江も耳を疑う。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。じゃあそのまま現世の司狼丸の魂とくっついたりしたら……」
「そう、現世の司狼丸と前世の司狼丸とが接触すると、対消滅が生じて司狼丸の魂は永遠に消滅してしまうの。来世に生まれる事も出来なくなる。完全に記録だけの存在になってしまうのよ」
「嘘……!何とか……何とかならないんですか!?司狼丸が消えてしまったら、私……!」
「沙紀ちゃん、落ち着いて。話を最後まで聞いてからにしよ、ね」
沙紀が何時に無く取り乱してミルドに近づこうとするが、その袖を螢が掴んで止めに入る。
一方で、ミルドは沙紀の反応を無理も無いと見つつ、望み有りとして続ける。
「幸い、それを知っていた尸陰は、力も消滅させられたら困ると判断して、現世の司狼丸には一切手出ししないみたい。力を手にしたら、どうするか分からないけれどね」
「……前世の司狼丸の魂を現世の司狼丸の魂に触れさせずに解放させる、それにはどうすれば良いの?」
それこそが、司狼丸を救う手掛かりと見て響華丸は問う。
「魂の解放自体は難しくないわ。縛っているもの、つまり金剛や尸陰を倒せば、彼の魂は解放され、真の輪廻の環に戻るの。輪廻転生において、本来は前世と現世、現世と来世との間で行われるのが自然なんだけれど、特別な因果が働くと、同じ世において転生、つまり生まれ変わりが生じるわ。沙紀、あんた、雅経(まさつね)と家隆(いえたか)という人物を知っているかしら?」
「!確か、退魔行の依頼で会った人達です。後、巫女が一人いて雅経さんって人とある森へ一緒に逃げていたのを私達が見つけて、でも2人を探していた家隆さんと6人で森を抜け出した後、和解しました」
沙紀の説明に、ミルドの口元にうっすらと笑みが浮かび上がる。
なかなか興味深い出来事のように思えたのであろう。
「どうやら、あんたのいる世界での3人は、その時点で因縁の鎖を断ち切れたようね。彼等、特に雅経と家隆は1000年以上の時を超えて生まれ変わった場合もあったの。先程話した、特別な因果でね。その後の結末は、彼等の確認された世界によって様々。和解したり、死んだり、ね」
「……」
よもや、自分達が特別な因果を断ち切る手助けをする事になるとは。
しかしそれが果たして良い事か悪い事なのかを、自分は判断出来ない分、手放しに喜べるものではない。
沙紀はそう考えながらも、話の続きを聞く。
「話を戻すけれど、前世の司狼丸は、一旦真の輪廻、つまり前世と現世を繋ぐ輪廻の環に魂を戻す必要があるの。そうしないと、現世の司狼丸に悪影響を及ぼす危険性もあるわ」
「金剛達をぶっ飛ばさないとダメって訳か」
簡単に言えば、江が言った通りである。
そしてそれを見越して、尸陰は響華丸達を自分達の本拠地へ誘ったと考えても良い。
つまりは罠である事は間違いなかった。

「……尸陰は、あくまで私達を待つ状態にある、そう言っていたわ。となると、攻めるとしたら……」
響華丸が睨んでいたのは、尸陰が、目的達成に必要なものは時間と別なものにある事。
あるいは、わざと計画を送らせているという見方もある。
どちらにしても、答えは決まっており、ミルドがそれを口にする。
「まあ、万全の状態で戦いに挑むに越した事はないわね。私も今までの事を伝承院に報告して、そこからの指示を仰ぐ事にするわ。伽羅も、正式な登録を済ませないといけないから一緒に来てもらうわよ」
「え、あ……はい」
かつて自分を同志と呼んだ男の、一人娘。
彼女の手に引かれた伽羅は複雑な気持ちで指示に従い、ミルドによる転移の際にチラリと琥金丸の方を見る。
琥金丸も、状況が状況と受け入れてはいるが、伽羅の気持ちを少しだけ理解していたらしく、彼女が転移するのをずっと見守っていた。
「……で、時空の果ての地に、どうやって行くかは考えてるの?あそこは直接行くにはかなり難しいみたいよ」
容赦無いエレオスの切り出しに、そう言えばと一部が首を傾げたり、顔を顰めて唸る。
監査局からの直接転移では向かえない場所であり、十二邪王のスパイだったミルドについても、他の者によってその移動手段を断たれた可能性も否定出来無い。
と、そこへ弥衛門が鎧禅と共に飛び込んで来た。
「皆、待たせたな!いや、そのつもりは無いかもしれないが……」
「あー、弥衛門さん」
「鎧禅のおっさんもか」
螢と江が真っ先に反応する中、あちこちが煤だらけながらも元気な様子の弥衛門は満面に笑顔を浮かべていた。
「わしの最新作にして、一番の取って置きが完成したぞ!本当の意味で何処にでも行ける最新の虚ろ船だ!何処へ向いたいか、望めばその通りの時代へ行けるという操作も簡単で、誰でも扱えるし、君達全員が乗れるくらいの大きさだから問題無かろう」
まさに渡りに船、と言いたいところ。
しかし念には念をと、響華丸が問い掛ける。
「弥衛門さん。その最新作は、時空の果ての地という所にも行けるの?」
「うむ。その時空の果てという時代も、敵の今までの出現パターンを逆探知し、その座標を特定する事が出来た。今回の襲撃時が決め手になった。鎧禅も協力してくれたおかげでな」
「流石は弥衛門さん。助かります!」
自信に溢れる弥衛門の返答に、音鬼丸を初めとして誰もが表情を明るくさせる。
「毎度、あなたには助けられますわね、鎧禅」
「仲間を、上司を支えるのが自分の務めですからな」
「試運転も済んだ。ただ、初めてという事と、場所が場所なだけに1往復でエネルギーを使い切ってしまった。それのチャージに2日時間が必要になるがな」
不安要素もしっかりと無くなっている。
後は、その2日で自分達も準備するまでだった。
「2日ねぇ。それだけあれば、訓練も十分。あたしも身体をしっかり温め直さないとね」
「じゃあまずは御飯を食べて、お風呂に入って寝ましょう~」
エレオスが仕切るのかと思いきや、螢が何時もの調子で仕切るので、響華丸達はもちろん、先手を取られたエレオス自身も大声で笑い出した。
それは、決戦前の、緊張を解す為のものでもあった。



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あとがき

大勝負が2つとなった今回。
真に乗り越えた響華丸ですから、転身も取り戻す事が出来ました。
クール故の、迷いの少ないキャラを立てた事になった訳です。
ミルドが転身する姿は、ONI零のそれに近しい形と思っていただければ。
父親が父親であり、かつ半妖ですので、流石に元祖系にするのは如何なものかと思いまして。

時空監査局、羅士、ONIの文明と続くオリジナル組織の三世伝承院は、『前世とかの絡みに相応しい状態で』という事で考えてみました。
物語が大分核心に来ておりますが、次は戦いの前、といった感じの話を展開していきます。
転生、生まれ変わりという事で、ONI零及びそれと関係のあるゲームのネタも入れてみました。

ではでは。

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