ONIの里

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隠忍伝説(サイドストーリー)

~ONI~現代~ 新隠忍伝説~

novc 作

第1話 深夜にて

時は深夜。
街灯が煌めく夜の公園で1人の男子が歩いている。
 男子の服装はダッフルコートで雰囲気的に高校生~大学生と思われた。
 今のご時世、高校生が深夜に出歩くことは珍しくもないが、その分、未成年者に対する深夜の出歩きは各地の条例など厳しい。

 ――さっさと帰ろう。警察に職務質問でもされたらめんどくさい。

 その男子は、吹き付けた木枯らしのあまりの冷たさに身を縮こまらせた。

「……クシュっあ~寒ぃ……早く帰って暖かい風呂にでも入りてぇ」

 なんて独り言を呟いてみるものの、寒さは和らがない。
寒さもそうだが、もし職務質問なんてされたら、きっとめんどくさい事になる。
あの厳しい『姉』か、お節介な幼馴染みにお小言を言われるのは必至だ。
だから一刻も早く帰宅せねば。

 真夏の深夜の公園ならカップルやヤンチャ坊主が居たり、花火をしている人間や、街灯の下で蝉がけたたましく鳴いて賑やかなのかも知れないが、真冬の公園なんて閑古鳥。
 聞こえるのは、すぐ近くを通る車の音と、風の音……そして自分の足音だけ。
 誰も居ない空間を男子は足早に通り過ぎようとして、ふとベンチに座る人物に気が付いた。

 ブーツに網タイツにミニスカート。まず目に入ったのはソレだ。
 茶髪に厚手の上着を着て、今どきの、ちょっとハデめな女性がベンチに座っている。
 ……たった1人で。

 ――ウホッいい女。……ダメだネットに毒されてるな
 男子は自嘲気味に口元に笑みを浮かべてしまう。

 実際はベンチに座っている女性はかなり美しい。
 美しい上に遊び好きな感じがするものだから、声をかけたくなるし、かけやすい。
 また誰も居ない公園だ。悪戯しようとする不届き者が居ても助けは来ないし、また悪戯するには絶好の場所でもある。
 男の独りよがりな考えをするなら“悪戯してくれ”と誘っているようにも思える。
 もしかしたら男性を相手にするプロの方かも知れない。都会の公園ならいざ知らず、こんな地元の公園にいるのもおかしいとは思うけど。

 もちろん男子には、ナンパをする気も無いし、ましてやそういった大人の世界に入るつもりもない。

逆に罠かも知れない。
 ワザと女性を1人にして、近寄ったところで怖いお兄さんが数人出てきて因縁を付けられるかも知れない。
 お決まりの“俺の女になにをする”とか言われて、お金を巻き上げられる事も考えられる。
 考え過ぎかも知れないけど、こんな世の中。思わぬ事が起こるから用心にこしたことはないだろう。
 
 同級生にはない大人の女性の魅力はドキドキさせるものがあるし、もう少し鑑賞したいと思う反面、万が一女性とトラブルになったら、過保護な『姉』がどう出るか。
きっと、式神で四六時中監視される生活が待っている。

身体に先ほどまでの寒さとは違う、震えを感じた。
触らぬ神に祟りなし、というわけで足早に通り過ぎて女性から離れていく。

ところが女性が死角になったところで声が聞こえてきた。

「お姉さん。こんな夜中に何してるのぉ~」
 こんなに寒い深夜でもナンパする輩はいるみたいだ。

 もしかしたら女性は誰かと待ち合わせをしているのかも知れない、深夜から遊びに行くのも当たり前になった昨今、充分に考えられる。まぁこんな深夜でしかも寒い夜に公園で待ち合わせをさせる彼氏は、彼女に対して配慮に欠けすぎるが。
 誘われるのを待っていたのかもしれないが、そうだったら都会の街頭、例えば新宿の歌舞伎町周辺なんかでナンパ待ちした方が効率が良い。

 ――とりあえず、様子を見てみよう。

 怖いお兄さんが出てきたら、その時はその時だし、男が不届きにも女性に襲いかかるかも知れない。
 万が一は助けないと。
 仮に見捨てて立ち去ったりしたのが家族、主に『姉』にバレた日には折檻が待っているのは目に見えているから。
 過去にされてきたことを思い出して、身を震わせる男子。
 だからそっと影から女性と男の成り行きを見守った。

 男は二人組で軽やかに女性に近づいていく。
 一方女性はニッコリと微笑みながら、なにやら話している。
 男の方は下心見え見えで

 ――あんな大人になりたくねぇな。

 と男子に思わせるほど。

 ――もっとスマートな誘い方見てみてもんだな
なんて思った。

 しばらく男達と女性は親しく話し合った後、男達の誘いに女性は乗ったようだ。
 女性はベンチから立ち上がった後、男達に付いていった。

 ――チェ。よろしくやってくれ。

 と、心で毒づきながら立ち去ろうとして気付いた。
 かすかな妖気を。
 それもさっき男達が向かった方向からだ。
 イヤな予感がして男子は男達が立ち去った方向に追いかける。

 同時に耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。

 男子は走る。全速力で。声がした方向へ。
 現場はすぐ近くだった。

 男二人のウチ、1人は尻餅をついて、股間はジットリと濡れている。
 もう1人は女性にきつく抱きしめられて首筋にキスされていた。
 普通なら美人にそんな情熱的に迫られたら喜びこそすれ、嫌がることは特殊な性癖を持たない限り考えにくい。
 だがキスされている男は嬉しそうな顔もせず、いやらしい顔もせず、ただ恐怖に顔を歪ませて叫び声を上げている。
 女性は一心不乱に、喉を鳴らせていた。
 まるで銭湯で腰に手を当てながら、風呂上がりのフルーツ牛乳を一気飲みするかのように。
 男子が近づいてきたのを知ると、女性は“マズイわ”と一言いうと、今まで抱きしめていた男を無造作に地面に叩き付けた。
 地面に叩き付けた後、女性はゆっくりと男子の方に向き直る。

「あらあら、また獲物が来たわね」
 と艶っぽい声を出し、蠱惑的な瞳を男子に向ける。
 女性の口元には一筋の赤色が……血液だった。
 普通なら口元から血液を垂らしているなんて何事かと思うが、女性の場合は不思議と絵になる。
 むしろ美しさを引き立てる。
 “私ったらはしたないわね”なんて言いながら、優雅に口元をぬぐいながら、眼は男子に向けられたまま。
 じっくりとねっとりと品定めをするかのように、いや実際に品定めをしているのだが、頭の先からつま先まで視線を動かす。
 視線に絡め取られたのか、男子は一歩も動かない。

「貴方気に入ったわ。私好みよ……そういえばさっき私の前を通ったわよね?」
 と、言いながら淑女のような歩調で男子に近づいてくる。
「やっぱり男は若いに限る。さっきの男はダメね。タバコ臭いし、不摂生だから血がマズすぎるわ。これだったらまだ女の血を吸った方がマシだもの」
 男子は、尻餅をついた。
 膝は笑っているが、それでも懸命に後ずさりする。
「あら怖いの?」
 女性は茶目ッ気を称えた眼で男子を見つめながら、甘みを含ませた声をかけ、ゆっくりと獲物を追いつめるように近づいてくる。
 男子は近づかれた分だけ後ずさる。

「怖がらなくても良いのよ」
 男子は、なおも後ずさる。
「坊や……」
 確実に近づいてくる女性に逃げ切れないと判断したのか、はたまた観念したのか男子は後ずさるのを止めた。
「素直な子は好きよ。ご褒美にお姉さんがたぁ~っぷりと可愛いがってあげるわ。……たっぷりとね」
 女性は男子の上にしなだれかかってくる。
「……火砕焔」
 男子が呟くと、突如女性の顔の前で火の玉が出現した。

 とたんに、女性は猫がケンカする時のような金切り声をあげ、大きく後ろに後ずさった。
「ちとハデだったか」
 男子は緩慢な動作で、しかし隙がないように立ち上がる。
「残念だったね。せっかく好みと言ってくれたのに」
 さっきまでの従順な態度はどこへやら。
 男子はふてぶてしい態度になっていた。
「いやぁ~さすがに一般人の目の前で仕事はマズイと思うからなぁ。奴らから離させて頂きましたっと」
 軽く髪の毛を整えながらそう告げる。
 後ずさっていたのは、陽動だったと言うのだ。

「おのれ……貴様!!」
 今までの余裕たっぷりとした態度ではなく、真逆の態度になる女性。

「ここで会っちまったのも何かの縁だ、大人しく退治されな!!」
「……グググ……小僧が!!」
 女性は怒りに身を任せて攻撃してきた。
 女性の爪は鋭く長く尖り、切れ味は良さそうだ。
 まるで鉄すら豆腐のように切り裂くのでは無かろうか。
 その爪を用いて大きく右手で横薙ぎをかけてくるが、男子は苦もなく後ろに下がり避ける。
「おのれ、お前は絶対に私のものにしてやるわ!!」
 なおも冷静さを欠いた攻撃をしてくる女性。

「ふっ……」
 男子は口元に僅かに笑みを浮かべる。
 胸元に手をやり、ダッフルコートの中から木の玉を取り出した。
 そして木の玉を相手に投げつける。
 木の玉が相手の身体に触れるか触れないか――
「解」
 と男子が呟くと木の玉は砕け散り、同時に雷のような音がした。

「ギャァァァァァァァァァァァァァァ」

 女性は、苦悶の叫び声をあげる。
 男子はいつの間にか右手に装備していた日本刀を構えると――

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「終わったか」
 残った死体の処理も専用の札で終わらせあたりを見回す。
 万が一見られていないか、これからこの付近に人が近寄らないか確かめた。
 異常なしと判断すると、コッソリと先ほどの男達の元に戻る。
 まだ、男達は居た。
 股間を濡らしている男は、ガクガク震えているばかり。
地面に叩き付けられた男の方は死んでいるかどうかはわからない。
 男子は一般人には出来るだけ存在を知られたくないから。
 知られると困ることが多いから。

――ここから先は俺の出る幕じゃない。だったら……

 男子は新しい札を取り出し、二人の男性の額に貼り付けた。
なにやら呪文を唱えると、携帯電話を取り出した。
そしてどこかへ連絡した後、すぐに立ち去った。

 数分後、救急車とパトカーのサイレンが公園に近づいてきた。


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あとがき

はい。この「ONIの里」管理人をしていますnovcです。

まず一言
8年ぶりくらいに連載再開で、しかもいきなりリメイクという暴挙に出ました。

いや、やっぱりこの8年の間に色々と設定を思いついたりしたら、最初の流れではどうもいかんとなり、いきなりリメイクしてみました(爆)

というわけで、純粋にONIが好きな方御免なさい。


なんかひねくれたシリーズです。
まぁGBやSFCの連中の子孫が現代にいたらという思いで書いてますんで、かなりご都合主義です。
いいんだ、SSなんてそんなもんだろ!?(爆)

え~先に言っとこ。
いわゆるGB・SFCのONI達もでてきます。
キーワードは「天下五剣」と「からくり弥衛門」です。

すっごく執筆速度は遅いので更新は遅れがちになると思いますが、これからも宜しくおねがいします。

novc