ONIの里

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隠忍伝説(サイドストーリー)

戦鬼

温羅さん 作

「悪いこと言わないから、行くのはやめなよ。」
床の上で、着物をはだけた女が火鷹に忠告する。
火鷹はその声に耳を貸そうともせず、刀を携えると立ち上がった。
「・・・・やめときな・・・・・相手は人じゃない・・・・・”鬼”なんだから・・・・」
その言葉に、火鷹が足を止める。
そして、吐き捨てるように呟いた。
「悪りいが・・・・俺はその”鬼”とやらに用があんのさ。」
女はそんな火鷹を、悲しげにみつめた。
「どうして、あんたはいつもそうなんだろうねえ・・・・・・」
枕もとの徳利に手を伸ばし、猪口に酒を注ぐ。
それを一気に飲み干すと、ゆっくりと火鷹に近づき、抱きついた。
「・・・・・どうしてあんたは、いつも”戦い”ばっかりなんだろうね・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・もっと、普通の幸せを手にしたいとは、思わないのかい・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「例えば・・・・・・あたしと所帯を持つ、とか」
女はそう呟くと、縋る様に火鷹をみつめた。
火鷹は何も言わず、女をみつめかえす。
その瞳が、全てを物語っていた。
修羅の道を歩き続ける、火鷹の運命を。
「・・・・・・・・・やっぱり、無理かい?」
女は、おどけたように火鷹から離れた。
火鷹はそんな彼女から目を逸らすと、ゆっくりと部屋を出て行く。
「ねえ、次は・・・・・・・いつ会える?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
火鷹は何も言わず、部屋の出口まで進んだ。
女は諦めたように視線を下に向けると、再び徳利に手を伸ばす。
その時、火鷹がふと、足を止めた。
そして、振り向かずに・・・・・・・独り言のように呟いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・いつか、な・・・・・・」
その言葉を聞いた女は、猪口を口に運びながら、薄く微笑んだ。
そのままどちらとも相手を見ようとせず、そして、火鷹はその場を後にした。
「・・・・・・いってらっしゃい・・・・・・・・・・・」
独り残された女は、窓の外から見える三日月を見ながらそう呟いた。
修羅の道を歩む「隠忍」が、いつの日か、安らぎに身を委ねるその刻を信じて・・・・・・・・・・・



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作者  さん