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隠忍伝説(サイドストーリー)

大切な人に送る祈り 第三部 ~君に、貴方に、永久の幸福を~

ヒツジさん 作

ある双子の兄妹は、時代は違うが、同じ時刻に丘の上で相手のことを思っていた

御琴は伽羅から譲り受けた髪紐を後ろの両脇の髪に一本ずつ結び、手を組んで祈る

(これが、私がお兄様に出来る事…)

音鬼丸は直立し、何か決心を固めた様な表情で、真直ぐに月を見る。

(僕が御琴に出来る事は、これしかない…)








(御琴…)
(お兄様…)
 

(僕は毎日平和で穏やかな生活できて幸せだよ)
(私は愛する人と一緒に居ることが出来て幸せです)
 

(けど…)
(ですが…)
 
 
(御琴に会えなくて寂しいよ)
(お兄様に会えなくて寂しいです)
 
 
(でも)
(ですが)
 
 
(僕は御琴を絶対に忘れない)
(私はお兄様を絶対に忘れません)
 
 
(どんなに苦しいことがあっても)
(どんなに苦しいことがあっても)
 
 
(どんなに辛いことや悲しいことが起きても)
(どんなに辛いことや悲しいことが起きても)
 
 
(僕は君の事を想い、信じ続けるよ) 
(私は貴方の事を思い、信じ続けます)
 
 
(この想い)
(この思い)
 

(御琴に届いて欲しい)
(お兄様に届いて欲しい)

 
(御琴…)
(お兄様…)

 
(君に)
(貴方に)



(永久の幸福を)
(永久の幸福を)





(離れていても) 
(離れていても)

 
(僕は強く生きる)
(私は強く生きます)
 

 




(御琴…)
(お兄様…)


 





(僕は…)
(私は…)






 






(君を…)
(貴方を……)










風が吹いた



一瞬、二人の思いがお互いに届いたと、音鬼丸と御琴は感じた。そして





(いつか再びここで会おう)
(いつか再びここで会いましょう)

二人は心の中で別れを告げた。再開の約束を結んで





















隠れ里に戻った天地丸は茨鬼童子と酒を酌み交わしていた、琴音は二人に遠慮して既に寝ている

「茨」
 
「なんだ?」
 
「人を愛することって、本当に良い事だな」
 
「音鬼丸の事か?」
 
「そいつは教える事が出来んな」



「そうか・・・・・」
  
ほんの少しの沈黙の後、茨鬼童子はぽつりと呟く、なんとなく気付いた様だ。

「音鬼丸は誰を好きになったかは分からないが、その事は父親として嬉しく思う」

「何故だ?」
 
「音鬼丸は人間と鬼の間に生まれた子供だ、純粋な人間ではない。しかし人を愛する心を持つことができたのなら、音鬼丸は人間だとゆう証拠になる、俺には、そのことが本当に嬉しい」

「音鬼丸だけじゃないぞ」
 
「ほかに誰が居るのだ? 御琴か?」

天地丸はとっさに

「お前だよ」

と誤魔化した、茨鬼童子は気づいているのかいないか、天地丸は分からなかった。

そんな天地丸を尻目に茨鬼童子は声を上げて笑った。

「お前もたまには良い事言うじゃないか」

「まあな」

天地丸は微妙な苦笑いをする。 

「今日は本当に嬉しい日だ、もっと飲もう、天地丸」

「ああ、そうしよう」

茨鬼童子は、天地丸の杯に自分で酒を注いだ。







音鬼丸は丘から帰った後、こっそり自分の部屋に戻って手紙を書いていた。


御琴に対して出来る事は、後はこれしかない。




「御琴へ

元気に琥金丸と仲良く暮らしているかい? 仲良く暮らしているならそれで良いんだ。僕の思いを此処に書くよ。

もし、君が僕の妹じゃなくて全然関係ない普通の女の子だったら、君を、男として好きになっていた。 けど君は僕の妹だ、だから何も言わない、君が幸せになってくれれば、僕はそれで十分だ。

答えを出す前は、色々悩んだり苦しんだりしていた。けどもう苦しむことは無いから安心してね?

君と暮らした事、一緒にしてきた事、色んな思い出

僕は御琴と一緒に過ごした日々と、御琴への想いを、抱きしめながら生きることにするよ。

御琴がずっと健やかで、幸せに暮らせるよう祈ります」



そこまで書いた音鬼丸は筆を休め

(よし、書けた!)

その紙を大切に懐にしまう。

(この手紙、どうやって未来の御琴に届けよう…。 そうだ!弥衛門さんに相談してみよう、そうと決まったら明日早速人間界に行こう!)

深夜にもなると言うのに音鬼丸はせっせと旅支度を整える。何をすればいいかが分かると、何も苦しまず、悩みも無かった。

(待っててね御琴、この手紙を絶対君のところまで届けるから!)





そして、300年後の日本

 
琥金丸は家に居ない御琴を探していた、琥金丸は丘の頂上にいた御琴を見つけた

「ここにいたのか、探したよ、御琴」
 
「すみません」

琥金丸は、御琴の眼が少し赤いのに気づいた、眼の下には何かの痕がある。
 
「泣いてたのか?」

 
「ええ、少しだけ」

恥ずかしそうに顔を背けながら御琴は喋る。 

二人の間に静かな沈黙が流れた。

琥金丸は御琴の髪紐を見て

「その髪紐、似合うよ」

再び二人は見詰め合う。

「私は、着けたいから着けているのです。深い意味はありませんよ?」

「ああ、そうだな、今度は絶対に間違えないぜ?」

(もう、何も失いたくない、人も、思いも、全部)

あえて口には出さなかった、いつか言葉にする日が来るだろう。

「?」

「無理、するんじゃねぇぞ? 俺が一緒に居るからな?」

照れているらしく、少しぶっきらぼうに喋る。 

「…ありがとうございます、琥金丸さん」
 


「…行こうか?」


「はい。どこまでも、いつまでも、貴方と一緒に」

 
もう一度眼が合う。

「琥金丸さん?」

「ん?」

「眼を…閉じてください」

御琴が何をやろうとしているのかが琥金丸には分かった、それほど彼の精神は成長している。

「…ああ」

琥金丸は眼を閉じる。

(琥金丸さん…、ずっと、一緒に…)

御琴は手を後ろに組んで琥金丸に近づき、眼を閉じる。少しだけ背伸びをし、琥金丸の唇に自分の唇を重ねた。

(お兄様、私は今、本当に、幸せです)



満月だけが、二人を見下ろしている。 二人は、二度と離れることは無い。



 *~後書き&解説~


え~長々とこの話を見てくれてご苦労様です。この話は色んなコンセプト基づいて作られました。

①「音鬼丸の御琴に対する想いを勝手に想像してそれを昇華させちゃおう!」
②「琥金丸イメージアップ大作戦!!」
③「御琴の思いを成就させちゃおう!」 etc…

御琴が好きでⅤをクリアしてない方は、ぜひⅤを買ってクリアして下さい、きっと琥金丸に無茶苦茶キレるでしょう(爆)

ここで解説を、音鬼丸と御琴の祈りの場面の

“君を……“
“貴方を……“

の“……“の部分の具体的な内容はあえて打ちませんでした、どのような内容かは考えてみてください、ヒントは二つ。

①音鬼丸と御琴は同じ事を思ってない
②「おもい」と言う言葉に注目してみてください。

もう一つ、最後から二行目の琥金丸と御琴の行為の事なんですが…、最初は

「二人は互いの顔を見つめ合い、そして…」

「“…”の部分は読者の方の想像にお任せします♪」って感じでやろうと思っていたんですが見直してみると「これでいいのか…?」と考えました。
「どうしても琥金丸と御琴に××をさせたい!」&「世の中に大勢いらっしゃる音鬼丸×御琴ファンの方々に失礼だ!」と二つの思惑が殴りあった(?)結果…、「こうなったらヤケクソじゃぁあああ!!!」と自暴自棄になり、勢いで書いてしまいました。
もう「音鬼丸×御琴」ファンの方々にボロクソ言われても文句言えません…orz

やっぱりコレも「大切な人へ送る祈り」の修正版でございまして、題名や副題も変えて半分ぐらい加筆修正を行ったものです。
音鬼丸と御琴の手紙、伽羅の髪紐の話などは修正したときに追加されたエピソードです。
一番苦労したのが第一部の琥金丸と御琴の語り合ってるシーン、二人の考えてることをまとめるのに苦労しました、途中で投げ出しそうになりましたが何とか踏ん張って書き上げました。

伽羅が御琴に髪紐を渡したのは公式ではないのであしからず、もう一度一番最初に書いたものを読み返すと「分かりにくい!」って思いました。

その節に関しては管理人のnovc様には多大な迷惑を掛けてしまい本当に申し訳なく思っています。

この話は「幼馴染と過ごした誕生日」&「兄妹の絆」の続きなのでこの2作を呼んでいないと分からない部分があると思うので、未読の方は是非!前二作品を御覧なさってください。

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作者  さん


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