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隠忍伝説(サイドストーリー)

隠忍 -The Guilty of Past-

桃龍斎さん 作

最終話 過去の罪の清算

転身したエレオスは急降下と共に右手を振り上げ、五指より伸びるその爪で御琴に切り掛かる。
それを剣で受け止めたのは御琴の前に出た響華丸だったが、獣の爪は光の剣で砕けたりはせず、逆に光の剣に悲鳴を上げさせる。
響華丸がそれでも踏ん張る中、天地丸と音鬼丸が彼女の左右から駆けてエレオスを上方へ蹴り飛ばすが、わざと喰らったらしく、エレオスの表情は余裕に満ちており、追撃に入ろうとした2人に向けて左手を振るう。
「はぁっ!!」
振るわれた左手の爪、それは空気だけでなく光をも切り裂く漆黒のカマイタチを呼び、天地丸と音鬼丸の全身に絡みつかせた。
「ぐっ!この威力、過去に戦った邪神以上だ……!」
「か、身体が言うことを聞かない!うっ!?」
装甲が少しずつ切り傷に覆われる中、動きを封じられている2人にエレオスの左右の拳が迫る。
爪を意のままに出し入れ出来るその拳は決して一発ずつなどではなく、まるで爆ぜるかのように無数の球となって繰り出され、鬼神の五体を容赦無く打つ。
一発一発も並みの威力ではなく、鬼神の身を覆う装甲に少しずつながらも、確実に亀裂が入り、衣が裂け、肌も青白の血で滲み始めた。
「エレ、やめてぇっ!!」
猛攻を受ける天地丸と音鬼丸を見て居た堪れなくなったメイアはエレオスの上を取り、右の手甲から針を放つも、それらはエレオスの身体に命中する前に、彼女の全身から放たれる黒紫の闘気によって溶けるように消滅してしまう。
だが御琴が放った光の槍と、翼を羽ばたかせて昇って来た響華丸の剣が左右から迫ると、エレオスはその拳の弾幕を止め、天地丸も音鬼丸もカマイタチの呪縛から解放されて着地する。
「済まない、助かった!」
「今度は響華丸……!」
傷はまだ浅い方であり、体力・気力共に余裕はある天地丸と音鬼丸は頭上を見上げ、響華丸とエレオスの姿を視界に捉える。
「ちぃっ!この程度の手数!」
エレオスも2人を放した事で舌打ちしながら、迫ってきた次なる攻撃に対し、闘気を纏わせた拳で迎え撃つ。
一発に集約された拳は防御を目的としたものであり、光の槍は砕け散って消え、響華丸の剣も折れて飛ばされた部分が霧散した。
「まずは人形の分際で幸せを手にした、あんたからよ!!」
咆哮と共に響華丸に狙いを定めたエレオスの拳が再び無数となって放たれる。
それを避けるべきかと思っていた響華丸だが、刹那の判断で両手に光の剣を呼び出し、二刀流で応戦する。
2人の剣戟とも呼べる競り合いは、最初互角かに思えたが、段々とエレオスの拳の勢いが勝ち、響華丸の剣が少しずつ削り取られているのが傍から見ても良く分かる状態。
それでも、響華丸は戸惑う事無く、エレオスの背後に光球を幾つか回り込ませ光の矢を放たせた。
「うっ!?こいつ……!」
背中は決して無防備ではなかったが、突起から伸びる紫の炎を掻い潜っての攻撃を喰らったエレオスは動きが一瞬だけ鈍り、響華丸が剣を修復させて押し返しに入る。
「これでどう?」
エレオスが流れを戻そうと力を入れ直すその瞬間を見計らって、響華丸が瞬時に2本の剣を1本に纏め、一閃を胴に叩き込む。
「破邪ノ幾閃!」
繰り出された一撃が、内包された剣気をエレオスの体内で爆発させようとする。
しかし響華丸が振り向いたその途端、彼女の目の前にエレオスの拳が飛び込んで来た。
「なっ……!?」
攻撃が入っていない事で動揺していた為に、防御が間に合わず、まともにエレオスの右拳を胸元に受けた響華丸。
その一撃で装甲が砕けただけでなく、肋骨が軋み、息が一時的に出来ない状況が出来上がった。
「させん!」
このままでは響華丸がエレオスの左手の爪を受けるだろうと見て、天地丸が横から割り込むように拳を繰り出す。
それをエレオスが右手で受け止め、左手から伸びる爪を天地丸の脇腹目掛けて突き出すが、天地丸はそれを避けると同時に雷光を纏った左の膝蹴りを彼女の鳩尾に突き刺し、その膝を軸に右の回し蹴りを浴びせる。
「流石は伝説の鬼神!他の世界の奴とは比べ物にならないわねぇっ!!」
反撃を喰らったエレオスは飛ばされながらもすぐに体勢を立て直し、口から漏れた血を一旦舐めとって吐き捨てる。
一方で響華丸は落下したところを御琴に受け止められ、先の攻撃の痛みが治まっていた為すぐに飛び、御琴と音鬼丸、メイアもエレオスの出方を窺いつつ彼女に近づく。
「強い、そして美しい……それこそはあたし達王族が持って当然だったもの!奪われた者の怒りを受け取れぇっ!!」
誰が間合いに入ろうと関係無しとばかりに、エレオスは己の両手を、全てを喰らい尽くすかのように広げる。
その両の掌からは漆黒の稲妻が放たれ、大地を、空気を切り裂いていき、御琴達だけでなくリョウダイ達の方にも伸びて来た。
「くっ!一撃一撃に奴の憎悪が溢れ出ておる!」
「受け止めようとしたところで黒焦げか!」
「散ってもダメだから、固まって動かなきゃ!」
「同感だぜ!」
リョウダイ達も一塊の集団として動く事でその稲妻を避ける中、御琴達は一気に雷の茨を駆け抜ける。
「ふん、面白い!」
双龍の如き勢いで走る御琴と音鬼丸が真っ先に近づいて来たのを見て、ニィッと笑ったエレオスは稲妻を撃ち止めると、両手から爪を伸ばしてそれを突き出す。
その爪に対し、音鬼丸が間に入って懐に飛び込むと、エレオスの両の手首を掴んだ。
「今だ!御琴!!」
「はい!
兄の合図を受けた御琴は彼の頭上を飛び越え、輝く光の右拳を流れ星の如き勢いで振り下ろす。
「ぶっ!?」
予想を超える速さに、直撃を喰らったエレオスはそのまま殴り飛ばされ、赤の血を僅かに吐く。
その先を、回り込んでいたメイアが肩から当たり、同時に右の刃をエレオスの背中に突き刺す。
しかし、その刃はほんの僅かしか入らず、笑みを戻したエレオスが突起からの紫炎をメイアに浴びせた。
「きゃああっ!!」
「メイアさん!」
御琴と、音鬼丸が助けに入ろうと地面を蹴って翔ぶも、エレオスはメイアに背を向けたまま、2人に向けて稲妻を放って撃ち落とし、メイアを軽く右の裏拳で叩き落とす。
「3人共……!」
「高く付くわよ……!」
残る2人の鬼神は静かな怒りを抱き、エレオス目掛けて雷光の煌めきの如く駆ける。
そしてそこから剣と拳の連撃を繰り出すのだが、エレオスの余裕の表情は崩れておらず、両手の爪を振るう。
まるで刃の雨とも呼べるその爪は響華丸の剣と彼女の腕、天地丸の拳に無数の傷を刻んでいき、攻撃の合間にある防御をも打ち破っていく。
「砕けぇっ!」
無数の爪の攻撃の仕上げとばかりに繰り出される、両手同時の攻撃。
エレオスのそれに、今一度と響華丸は剣の力を高め、天地丸は右拳に宿る己の力を解放させる。
そう、まさにその一瞬を、エレオスが一撃に全てを込めようとしたその瞬間を2人は待っていたのだ。
「破邪の光剣(みつるぎ)!!」
「破邪の剛拳!!」
響華丸の両手持ちで振るわれ、瞬時に巨大になった光の剣。
天地丸の右手に力を集約させた、雷光と炎の拳。
鬼神が持つ究極の一撃、それらが息を、心を合わせて放たれる。
かつて敵同士でありながら、御琴という架け橋によって繋がった仲間としての絆。
その絆によって威力が高まった必殺の攻撃と、エレオスの全てを破壊せんとする爪が交錯すると同時に、眩い光が走った。

光と共に走った凄まじい突風、それは遺跡の柱を吹き飛ばし、地面に叩きつけられて身を起こそうとしていた御琴達も踏ん張り切れずに岩壁や遺跡の壁に叩きつけられた。
「う……響華丸さん!伯父様!」
光の中心にいるであろう2人を呼ぶ御琴は、光が止むと共に飛び出して地上に降り立ったその姿を見据える。
エレオスの攻撃を真正面から浴びていたようだが、2人の攻撃でその威力が打ち消されていたのであろう、さほどの手傷は負っていない。
そして、空中にただ一人留まっていたエレオスは、甲殻のあちこちが砕けており、転身前より幾分か鍛え上げられた肉体そのものも無数の火傷に覆われている。
血は流れ出ていないが、彼女の閉じた口から漏れ出る息は、確実に消耗し始めている事を示していた。
「ようやっとこの打撃……2人がかりじゃなかったら、最悪無傷になってたわね」
「ああ。そして今の攻撃、あれで少なからず彼女の精神も……」
エレオスの傷から、己の技の手応えを確かなものとしていた響華丸と天地丸。
しかし天地丸が次なる言葉を繋げようとした途端、エレオスは全身の筋肉を収縮させる事で火傷を小さくさせながら地上に降りた。
「……本当に、ぶっ殺しがいある奴等だわ。益々、成し遂げた時の充足感が噛み締められそうで……!だからこそ、まだまだ力が溢れ出て来る!」
悪鬼の如き笑みを御琴達に見せたエレオスの傷が見る見る内に塞がり、琥珀色の瞳は黄金に輝き始める。
その途端、エレオスは自分の全身の血管が、心臓の鼓動と共に脈打つのを感じた。
己の血に呼応して、外から何かが入ってくるような感覚。
その入ってきた『何か』を、彼女は即座に理解し、笑い出す。
「く……フフフ……アハハハ。ハァーッハハハハハ!!」
「「!?」」
まるで岩でせき止められていた川が岩を砕くかのようなエレオスの笑い声に、その身体から溢れ出る黒紫色の炎の如き闘気に御琴達は思わず身震いしてしまう。
今度は一体、何が起きようというのか?
その疑問に、彼女らの戸惑いの表情を眺めていたエレオスが笑みを絶やさずに答えた。
「仲間、夢、希望、勇気、正義、愛……それらは、あんた達の専売特許じゃあない。あたしにも、それらがある!この地で散っていった家族、同胞があたしに力を与えてくれたぁっ!!」
雄叫びに似たその言葉に、エレオスの全身が呼応し、彼女の身体を覆っていた甲殻が砕け散る。
それは決して主を見放したようなものではなく、蕾が開いて花が咲くように、蛹から虫が羽化するように、彼女が進化・成長する事を示していた。
エレオスの声が笑い声から、女戦士に相応しき掛け声へと変わる中、生まれたままの姿だった彼女の身体が白一色に染められ、その上を赤黒の鎧が覆う。
御琴や天地丸のような重厚感溢れるものではなく、響華丸のような身軽で女性らしさを示すその鎧には黄金の紋様が飾られ、漆黒の髪はまるで夜明けの如き蒼色へと変わる。
鬼の如き禍々しさを持っていた手足も、翡翠(ひすい)の輝きを持つ篭手と具足に覆われ、拳部分を覆う装甲に漆黒の爪が3本伸びた。
顔も目を除けば、仮面をしたかのような、鼻腔(びこう)も口も見えない、鼻梁(びりょう)の輪郭だけが見えるものになり、眦(まなじり)と頬に炎の赤を思わせる鋭い紋様が浮かび上がる。
最後に、額から伸びていた角は逞しさを増し、額部分も頭部の前方だけを覆う黄金の兜が装着された。
まさにそれこそは、かつて失われた文明の遺産、王族の忘れ形見とも呼べるエレオスの真の転身した姿だった。
「お、おい!?さっきまであたし達と同じ型だったのが、何で響華丸達のと同じのになってんだ!?」
「あの人なりのポカポカが、あの人自身を強くして、呪いを打ち破ってるんだ……!あの人の言葉通り、螢達の持ってる全部が、ポカポカの源……!もちろん、ドロドロの中のポカポカだけど」
螢がそう分析し、エレオスの心の奥底を見抜く。
彼女の心には、かつての戦いで敗れ去った父、母、そして仲間達の怨念がまとわりついている。
そして彼等の望みはただ一つ、自分達を阻んだ御琴とその仲間達の子孫を葬り、神々をも打ち破る事だ。
「ご覧なさい、愚かな神々!あんた達があたしに刻んだ呪縛は今、此処で完全に吹き飛ばされた!御琴達を打ち倒した後は、あんた達を皆殺しにしてくれる!二度とあたし達にあの呪いを、苦労が報われぬというふざけた呪いを掛けられないようにね!そしてそれを果たした暁にこそ、あたしは子孫達を救済する!全てがあたしを真なる神として受け入れる時!!」
力の解放と共に放たれた豪語。
それを受けた御琴は胸の奥底に突き刺す痛みを覚えた。
エレオスは、その一族は苦しみと向き合い、全てを賭けて戦っている。
血反吐を吐いてでも、自分達の未来を掴み取る為に。
それを感じる内に御琴は、己の行いが果たして正しかったのか、もしかしてエレオスの考えるように間違っていたのか、そうした疑問を抱いた。
それ故の胸の痛みだったのだろう。
しかし、その痛みに耐えながら、疑問に対する答えを出しながら、御琴はキッとエレオスを睨んで全身の力を増幅させた。
「あなたは、神になれません!怒りと憎しみで救おうとするあなたに、本当の温かな未来は築けない!」
「ほざきなさい!八将神の暴虐を野放しにした無能な神なぞに、その捨て駒でしかないあんた達に、全ての世界を守る権利は無い!あるのは、あたしに跪(ひざまず)く義務、支配される権利のみよ!」
漲る力を制御して、エレオスは言い返しと共に御琴に殴りかかる。
光の煌めきと共に御琴の目の前にまで迫った彼女が繰り出した右拳は、御琴の左肩に吸い込まれるように打ち込まれた。
「ぐぅっ!」
「!面白い!!」
左肩の装甲が粉々に砕けて身体も吹き飛ばされるかと思いきや、装甲も御琴自身も踏ん張っている姿に笑うエレオス。
次なる左の拳が御琴の胴に入るかと思われたが、御琴もそれを喰らうつもりは無く、右の掌をエレオスの胸元に押し当てて衝撃波を放った。
「はぁっ!!」
衝撃波はエレオスの攻撃を打ち消す為のものであり、本命は反動を抑え込んでの右拳。
それがエレオスの頬を捉えると、彼女の左頬に青白い痣が出来、鬼神の肉体も僅かに後ろへ押し出される。
「御琴はやらせないぞ!!」
空けた間に今こそと、音鬼丸が入り込みながら左右の連続拳を放つ。
「うああぁぁぁっ!!」
相手が何を抱えても、誰であろうとも、もはや容赦出来ない。
ほんの少しでも甘さを見せて躊躇すれば、やられるのはこっちだ。
音鬼丸のその意志が拳の速度を高め、エレオスの身体に拳を命中させていき、最後の掬い上げるような右拳が彼女を上空へ飛ばす。
「ハッ!小鳥や蝶が留まるかのような優しい拳だこと!」
痣を己の気力で癒やし、飛ばされた勢いを殺して空中に留まったエレオスはそう吐き捨てつつ、左手を御琴と音鬼丸目掛けて突き出す。
それと同時に、空気をも歪め、大地を焼く程の熱風が走り、御琴も音鬼丸も全身を焼かれつつ、重圧を受けて両手と両膝を地面に突く。
「そのままあぶり焼きにしてあげるわ!」
「ダメーーー!!」
左手の突風を保ちながら、右手に漆黒の闘気を集めていたエレオスは闘気の塊を2人の兄妹目掛けて放とうとするが、その横からメイアが割って入り、彼女の右腕をガッシリと両腕で掴む。
肩からの副腕がエレオスの両肩に突き立てられた事もあって、闘気はすぐに消えるのだが、エレオスは熱風を止め、左手でメイアの顔を掴むと、力任せに自分の右腕から引き剥がして地上へ投げ飛ばす。
「あんたから死んでみる?」
瞳をぎらつかせたエレオスの左手から、今度は鋭い槍の形となった闘気が放たれ、メイア目掛けて落とされる。
「死ねる……もんですかぁっ!」
投げの勢いで身体の自由が利かなかったメイアも、槍を前に自身の両腕と副腕を何とか交差させ、槍をしっかりと受け止める。
「うぅっ……!負けられない……私だって、御琴達の頑張りを信じる!!」
腕を貫かれた痛みを、涙を流しつつも堪えたメイアは槍を抜き取って捨てると、まだ動ける右拳から無数の針を放つ。
その針は瞬時にエレオスの全身に突き刺さり、装甲と肌を焼き始めた。
「!兄者ではなく、あんたの意志ね!メイア!!」
思わぬ痛手に呪詛の如く呻きながら、針を抜き取って傷を治し始めるエレオス。
メイアは4本の腕が青白い血に染まりながらも、無事だった翅を羽ばたかせて地上への激突を免れていた。
「本来はONIを殺す為の力だったけれど……でも、今はエレ、あなたを止める為の力になっている!私だって、外付けでも鬼神の血を、力を受け継いでいるわ!だから御琴達と一緒に戦える!エレを止めようと頑張れる!」
「なら、理想のあたしと笑い合える夢を見て死ねぇっ!!」
今度は両手に闘気を纏わせ、それを一つに繋ぎ合わせて身の丈を超える大槍を造り上げたエレオス。
彼女は槍の穂先をメイアに向けると、雷が落ちる如き速さで急降下する。
しかしその直線軌道は横からの雷光の如き天地丸の突進で逸れ、地面を砕くに終わった。
「苦しみと悲しみ、その乗り越え方をお前は間違えている!ならば俺達は負けぬ!」
「見くびらないで、魔封童子!このあたしも今やあんた達と同じ、いやそれを超える鬼神!!今その意味を示す!」
地面がすり鉢状になって陥没する中、その底でエレオスは槍を振り回して天地丸に斬り掛かる。
槍故に間合いが長く、風を斬るその一撃の鋭さも天地丸の拳が防戦一方にさせられる程。
援護に回るべく響華丸と御琴、音鬼丸、メイアが仕掛けても、その槍は前だけでなく、左右と後ろ、そして頭上からの攻撃をも受け流しつつ、5人を腕、足から切り刻んでいった。

「くっそぉっ!!あたしも加勢するぞ!」
「余も、後方からの援護ならば……!」
御琴達の劣勢を見かねて、江とリョウダイが向かおうとするも、それを螢とオウランが阻む。
「ダメだよ、2人共。助けたいのは螢もオウランさんも同じ。でも、あの人の放っている結界は、こっちの援護を打ち消しているみたい。だから、今は信じるのが一番だよ」
「私を一騎打ちで破った響華丸だ。私が入った所でそうそう戦況は傾かぬ。それに、見守るも我らの戦い!」
そう言われても、やはり助けなくてはという気持ちを抑えられない江。
だが、そんな彼の心に誰かの声が届いた。
『信じてやりな。響華丸を。響華丸を助けた御琴を!御琴の伯父貴と兄貴、そして御琴とぶつかり合った子を』
「(!?司狼丸か……!)」
声は最初に出会った時から覚えていた存在。
今は蘇る時を待って眠っている司狼丸の声を、まさか時空を超えて聞くことになるとは思わなかった。
だが、あの時戦いを止めろと泣き叫んでいた彼がそう言うのであれば、信じて見守るしかない。
「(……分かった。賭けるぜ)」
司狼丸の声は聞こえなかったものの、助けに行こうとする思いが止められて落ち着いた江を見て螢は強く頷く。
「これは、どっちのポカポカが勝つかの戦い……でも、螢には分かる!」
何が、などという問いは江からも、リョウダイからも、オウランからも投げられなかった。
その意味を一番に示していたのは、エレオスの攻撃を受けている御琴達だったからだ。
「うぅっ……!」
一番攻撃を受けていたのは、天地丸の入れ代わりにエレオスと真正面から攻防を展開していた御琴。
その身を覆っていた鎧は胸や胴を除いて全て無惨に切り裂かれており、露になっている美しい空色の身体も更なる青白の傷で埋めつくされている。
消耗も半端ではなく、荒い息遣いの中、瞼(まぶた)が何度か閉じかけようとしていた彼女が何故真っ向からエレオスの攻撃を受け続けているのか。
姪にエレオスの前方を任せた天地丸も、今も攻撃を果敢に繰り出してエレオスの手数を減らそうとしている音鬼丸、響華丸、メイアもその理由は分かっていた。
だからこそ言葉に出す事無く、御琴の行動を止めずに、代わりとして彼女の過度な負傷を抑えるべく動いているのだ。

「(こいつ……死ぬ気でもないのに、何で……?)」
この場でエレオスは初めての疑問を、御琴の無謀とも取れる動きに対する疑問を抱いていたが、未だに気づかない。
その疑問に対する答えは、既に御琴、そして天地丸達も知っている事に。
「(押しているのは間違い無い。御琴はもうボロボロで、転身していられるのも精一杯。なのにあの輝く瞳は……ちぃぃっ!!不愉快だわ!)」
苛立ちが募り、それを払うべく勢いを増すエレオスの槍。
だがその穂先が御琴の胴に入ろうとした瞬間に、メイアが槍の柄に副腕を引っ掛け、引っ張られる勢いに耐えながら自分の力を爆発させた。
「御琴、エレの怒りは、私も受け止めるから!これがあなたに、そしてエレにしてあげられる私の精一杯!!」
言いながら、自分の持つ対ONI用の力をエレオスの槍に流し込むメイア。
槍はエレオスの鬼神としての力で形成されたものである為に、その形を維持する事が出来なくなり、粉々に砕け始める。
同時にメイアの転身も、一気に力を使った事で解除され、無防備になった彼女の胴を刺し貫こうとエレオスの左手が伸びる。
それを阻んで拳の一撃を叩き込んだのは、天地丸だった。
「分かり合おうとした者達の思い出、俺の手が届く内にはそれを涙で濡らさせはしない!」
天地丸もまた、何処かしら負い目を感じていた事を理解していた。
自分の到着が早ければ、もしかしたら伽羅を救えたのかもしれない。
その悔いを抱いていた事に、彼は心無しか笑みが込み上げて来るのを感じる。
己は何でも出来る程、完璧ではないのに、とんだ思いあがりだ。
しかしそう戒めてこそ、自分達は前に進める。
そんな思いで繰り出された天地丸の拳がエレオスの左手の篭手を砕き、メイアがその場から離れた所で追撃の左拳が放たれる。
「くはっ!」
槍を失って手数が減ったエレオスは天地丸の雷の拳を顔面に喰らうも、浮きかけた足をしっかりと地面に突き刺すように踏み込ませる。
顔への左拳は鋭い一撃故に頬に切り傷が入り、そこから流れ出た血を拭う事無く彼女は改めて左手から漆黒の闘気の塊を天地丸の胸元に叩き込んだ。
「がはぁっ!!」
直撃を喰らった天地丸の、魔封童子の漆黒の鎧が砕け散り、角に小さな傷が、露になった胸元に大きな傷が刻まれ、その鬼神の身体が数十歩分飛ばされる。
「音鬼丸、響華丸、次を頼むぞ!」
陥没した地面の岩壁に激突するより前に踏み止まれた天地丸は、転身が解けていないものの、息を荒くさせて胸元を庇いながらそう叫ぶ。
その声を受け取って、先に音鬼丸がエレオスの前に出ると同時に一撃、右拳を彼女の左胸辺りに、刀での袈裟斬りの如く叩き込み、そこに深い傷を刻んだ。
「がっ!こんなもの、簡単に癒せるわ!」
攻撃を喰らって数歩下がり、攻撃の手が止まったエレオスは奥底から溢れ出る力を外へと放出し、それを傷口に集中させる。
しかしその傷の治りが遅くなっており、力の入り具合もほんの僅かだが弱まり始めていた。
「!?どういう事よ!?あたしの、あたし達の力が、押し負けているなんて有り得ない話だわ!」
「まだ分からないのか!?御琴がどんな気持ちで君と戦っているのか、どんな思いで君の攻撃を避けずに受け続けて来たのかを!!」
動揺が走り始めたエレオスにそう力強く言い切りながら、音鬼丸は彼女の胴に渾身の力を込めた左拳を突き刺す。
「分かりたくない!大人しくあたし達の勢力拡大に従っていれば良かったものを、保守に、守りに走ったそいつの気持ちなんて、邪魔以外の何ものでも無いわ!」
「うっ!?」
胴に突き刺さった音鬼丸の拳だが、エレオスは赤黒い鎧の胸部から緑色の触手を伸ばし、その触手で彼の左手首を絡め取って拳を引き抜く。
その拘束から逃れようとした音鬼丸だが、左手から急速に力が吸い取られていき、それによって疲労が激しくなる。
「あんたは黙って見てなさい!自分の半身が、無惨に殺される姿をぉっ!!」
音鬼丸は妹の死で絶望させてから殺す、そういう意図と共にエレオスは触手で引っ張り上げた彼の左手を自分の右手で持ち上げ、軽く天地丸の方へ投げ飛ばす。
投げられた音鬼丸は天地丸が駆け寄るよりも早く受け身を取って着地し、その姿と視線で御琴に自身の無事を示した。
「(お兄様、伯父様、メイアさん……!)」
エレオスから遠ざけられた3人は、確実に活路を開いてくれている。
それを無駄にはさせまいと、御琴は息を整え、己の内にまだ残っているであろう力を引き出そうとする。
「(エレオス……あなたの痛みは確かに受け取りました。その怒りも、憎しみも……だけど、それを背負って生きなきゃいけないんです。この手で守れる人達を守り、散っていった人達の分も、私は生きてみせます!)」
生きる、受け止める、そして突き進む。
その気持ちに応えたのか、吉翔媛子の鎧が再構築を始め、傷も少しずつ塞がっていく。
先程まで、防御に回すのが精一杯だったという疲労感も和らぎ、身体が軽くなり始める。
エレオスはそれを見て更に怒りが高まり、目が血走って来た。
「その顔が!その目が!その諦めない意志が、父者を殺した!家族を辱めた!そして同胞を苦しめた!!あんたこそが、一番に裁かれるべき、偽善者だぁぁぁっ!!」
罵倒と共に放たれたエレオスの闘気の熱線。
それが御琴に届くかと思いきや、響華丸の両手の剣が十字に切り裂いて消し飛ばした。
「!?司狼丸を救っただけで、すっかり御琴の弁護人のつもり!?響華丸!」
「あなたの気持ちは良く分かるわ。誰かが責任を取らないといけない。司狼丸達を、あなたの仲間達や家族を悲しませた責任、世の中を地獄に変えた責任、そして多くの人達を死なせた責任……でも」
言葉を区切ると共に、響華丸は再び最強の一撃を繰り出す。
「罪を責め続ける、それを手段としたあなたにこそ、世を救う権利は無い!」
光溢れる力の剣が光線となってエレオスの全身を飲み込む。
その中を、吹き飛ばされる勢いに抗いながらエレオスは突き進み、響華丸の目の前で姿を見せたかと思うと、そこから放たれた右拳が彼女の顔面を捉え、鋭く突き刺さった。
「ぐぅっ……御琴、行きなさい……!」
殴り飛ばされた響華丸はエレオスを見返し、次に御琴にそう言いながら地面と擦れ合って飛ばされる。
今の一撃こそが、エレオスの今まで繰り出した中で最高の一撃だったか、響華丸の身体は瞬時に岩壁へと叩きつけられ、転身が解除されかけた。
「挫けそうな時は、何時だってあなたの横に立つわ!」
強烈な衝撃を背に受けながらも、まだ残っている気力を爆発させて転身解除を押し止めた響華丸はしっかりとそう言い切る。
その言葉が一番の力になったのか、消耗を回復させた御琴は両拳を握り締め、全身から白桃色の気を放ってエレオスと向かい合う。
対するエレオスが黒紫色の気を放っている事から、2人のその様子はリョウダイからすれば天使と悪魔、聖なる女神と邪悪な女神の戦いを思わせるようなものだった。

「エレオス、私は自分が偽善者でも良いと思ってます。隠忍そのものが、偽善者と呼ばれても無理は無いのですから……」
「あんたには分かるの?善意で人間を助けたONIが、追い出されるならまだしも、助けた人間に殺されたりもしているのよ!そして神々はその様子に救いの手も裁きの雷も出さない……泣き喚いて死ぬ事しか許されない存在の気持ちが、あんたに分かるはずが……!」
「……まだ分かりません。そうした光景を実際に見ていないからなのかもしれない。でも、だからこそ分かりたい、分からなきゃいけない、そう思っています。そして今、あなたのその攻めを通じて分かりかけて来ました。私達の、心正しい妖怪を、人との共存を望む者達を、苦しんでいる人々を救う事とは何なのかを……」
「何が分かったというの?」
エレオスの琥珀色の瞳に、御琴は真紅の瞳で受け止めるように見詰め返した。
「脅かす存在を倒す事が目的なのではなく、怒りと憎しみ、悲しみを、その存在の真意を受け止める……それが、響華丸さん、そしてメイアさんと心を通わせた意味であり、この力を使う事の目的!」
「違うわ!この力は、あたし達を脅かす敵を打ち倒し、束縛する鎖を断ち切り、それを以て世を治める為にあるのよ!……司狼丸は、悲しみと呪いの運命を断ち切る事を望んで、時空を操る力を手にした!神ですら持たぬその力こそは、あたし達が世を正す権利有りと示す存在!それを善の神々は否定し、彼を孤立させた!」
怒り狂うエレオスのその話に、動かないものの響華丸が割って入る。
「だからこその私、いえ伊月よ。神様は、私達が自立出来る事を、苦しみや悲しみに屈しない存在になれるよう、試練を課している。立ち上がれないのならば、立たせるだけの力を貸せる存在が近くにいれば良い。今ならば私にも分かるわ。司狼丸を見守っていた神様は、完全なる絶望に沈みそうだった彼を救うべく、伊月の魂の欠片を私の身体に、血に宿らせたと!」
「……元々はONIを狩るべく生まれたあんたに、そんな偶然が……だったらあんたから死ねぇっ!!」
最初から抱いていた嫉妬は、たとえ己の身があるべき姿に戻っても消え去らない。
エレオスはその嫉妬の炎を闘気の光線に変えて響華丸へ放つ。
それを御琴は瞬時に伸ばした左手で受け止め、しっかりと握り潰して闘気を消滅させた。
ただ、闘気の光線は威力が半端ではなかった為、左手だけでなく篭手が砕け散り、腕自身も火傷で青黒く、ズタズタなものになっていたが。
「その妬みも、私が全て受け止めます!この痛みに、臆するものですか!」
勇気が腕の痛みを和らげ、出血を止めていく。
それを確かに感じ取った御琴は白桃色の闘気を更に燃え上がらせ、しかしあくまで受けの構えでエレオスを待ちに入る。
「綺麗事ばっかり……もう良いわ。あんたのその生意気な心をぶっ殺す!」
エレオスの闘気が最高潮に達した途端、彼女は地面を軽く蹴り、闘気を集約させた右拳で御琴に殴りかかる。
その拳は光を超える速さ故に、御琴はかわす事もかなわず頬を殴られて地面に叩きつけられ、次なる左拳を直接胴に貰った。
「くはっ……!」
鈍い音と共に鎧にヒビが入り、体内から燃え盛る炎のような闘気による痛みが襲う。
そしてエレオスの左拳によって地面が更に陥没し、瓦礫や岩の中に埋まりそうだった御琴は胸倉を掴まれて上へと放り投げられる。
「あたし達の怒りを、憎しみを、悲しみを受け止められる訳が無い!」
御琴を投げたエレオスは大きく右足で地面を踏み鳴らすと、それを以て上空へと翔び、御琴の行き先に先回りして右手を構える。
黒紫色の光球がその掌の中で作られ、エレオスが右手を突き出すと共に光球は矢となって御琴の左胸に向かう。
だが、御琴は体勢を立て直すとその矢を左手で掴み取り、右拳でエレオスの胸元を殴る。
「がっ!ど、どうして……さっきといい、今といい、どうしてあたしの、あたし達の力でもくたばらない!?」
殴られたエレオスの目が衝撃で見開かれる中、御琴の両手から放たれた光弾がエレオスの全身を撃つ。
「確かに、あなた達の仲間達の怒りや憎しみ、悲しみはあなたに力を与えています。でもそれは結局、『敵を滅ぼす』だけの力!それに負ける訳には行きません!」
星の輝きを思わせる光弾、それが着弾した箇所が青黒く染まり、エレオスはそれによって広がる痛みを怒りの篭った唸り声で押す。
「滅ぼす?それで十分よ!あんたの、あんた達の全てを、神々を滅ぼせるのだから!」
火傷が怒りで塞がり行くのを見てエレオスの顔に笑みと余裕が戻り、黒紫色の輝きを増した左右の拳が無数に増えて御琴の元へ飛ばされる。
拳の雨霰に混じって、エレオスの胸から伸びる触手が無数伸びて御琴の全身を一瞬にして拘束した。
「!?うぅぅっ!!」
水を汲む桶が砕けて、そこから流れ出る水のように力が抜けていくのを感じた御琴。
触手が鬼神の力を一気に吸い上げているのだ。
白桃色の輝きも弱まっており、エレオスの拳が一発命中する毎に鬼神の鎧もヒビが一筋ずつ入っていく。
守りの構えも取れない御琴はそのまま連続の拳を全身に受け、鎧も砕かれていった。
しかし、彼女の顔は苦痛で歪むにしても僅かであり、瞳の輝きは全く衰え無い。
鎧が全く無くなり、その下に纏われている青の衣も青白の血で染まりながら端が破けているのに、凛然とした表情は崩れる気配が無いのだ。
御琴自身も、不思議と落ち着いており、しかし真剣にエレオスの顔を見詰めて居た。
「(聞こえる……人間と分かり合おうとして傷ついている妖怪・妖魔達の泣き叫ぶ声が。見える……報われない未来に自分を見失い、挫けて闇に堕ちてしまいそうな人達の姿が……)」
痛みを感じる度に心の中に響くもの、脳裏に浮かび上がるもの。
エレオスの言う、彼女らの子孫達の苦しむ様子だ。
それらもまた、自分達の行いが影響しているのであろう。
ならばその全てを受け止める事こそが、生きて自分が成せる、せめてもの償い。
故に御琴はエレオスの猛攻を、真っ向から受け止めていたのだ。
一方でエレオスは焦りと苛立ちで拳の勢いを速め、触手による力の吸い取りも強くする。
「う、あぁぁぁっ!!」
此処でようやく御琴の表情が苦痛で歪み切り、全身が儚げに輝いて力を失い始める。
それこそがエレオスの望む結末への過程であり、今度は勝機を得た喜びで攻撃を激しくさせた。
「!?御琴!!」
「このままじゃ、御琴が……!」
転身が解除されていく御琴を見る内に、音鬼丸とメイアが今すぐ助けなければと動くが、それを天地丸と響華丸が制する。
無論2人もまた、御琴を助けたい気持ちで一杯だったのだが、その気持ちを押し留めていたのは、他ならぬ御琴であった。
『お願いです、伯父様、お兄様、響華丸さん、メイアさん……!此処からの手出しはしないで下さい!もし手を出したら、たとえ勝ったとしても何の意味も成しません!』
ハッキリと、力強く心に響いた御琴の声。
それを無碍(むげ)にする事など、天地丸でさえも出来なかった。
「鬼神の力は、目で見えるものじゃあない。そうだったわよね、天地丸」
「……ああ。だから、御琴は絶対に負けない。死ぬ事も無い!」
御琴の勝利を疑わぬ2人に対し、それを嘲笑うかのようにエレオスの最後の一撃が放たれる。
光に覆われる中、その中で今まさに人間の姿に戻ろうとしている彼女の身体を触手で引き寄せ、弓を引き絞るかの如く後ろへ引かれた右拳を突き出すという、止めの一撃。
それが御琴の胴に入るかと思われたが、それまで閉ざされようとしていた彼女の目がカッと開かれ、左手でエレオスの右手首を掴み取った。
「?!そ、そんな!!」
エレオスが初めて動揺を示す、少女らしい声を上げる。
転身が解けかけたという事は、消耗で限界が来ているという証拠。
そのはずが、御琴はより一層強まった握力で自分の拳を止めているではないか。
そうした事実が、エレオスだけでなく、彼女に力を与えていた怨念達をも揺さぶり始めたのだ。
「(私はこうしてまた、エレオス達を悲しませて、苦しませてしまう。だから、終わらない痛みと向き合います……!)」
固い決意、揺るぎない思い、そして覚悟。
これらに『彼女』が応えたか、御琴は失われたはずの力が戻って、更に高まるのを感じていた。
『辛い方を選び、その上で笑顔と幸せを守る……それで正解よ、御琴』
「(佳夜……)」
『頑張りなさい。この子の心を折る事が出来なくても、それに近しい事は成せられるはずよ』
「(ええ!)」
力の高まりは、エレオスの拳を止める左手から始まる。
左手から、両足、頭、胴の順に、確実に蘇っていく鬼神の姿。
吉翔媛子が持つ緑と赤の鬣は輝きを増し、鎧を飾っていた蒼色の宝珠も力強い空色に輝く。
「(倒れない、倒せない、殺せない!あの時、父者に出来た事が、その父者の力を得ているのに、あたしに出来ない!?)」
傷ついても立ち上がろうとする御琴の心と、動揺が激しくなったエレオスの心を示すかのように、2人の闘気のせめぎ合いが大きく傾いていた。
1秒、また1秒と御琴の闘気がエレオスの闘気を押し始め、それを包み込もうとしている。
「(怨みも憎しみも、全部包み込もうというの!?それが、転生して得た御琴、あんたの強さの意味?)」
包まれる感覚に、エレオスは首を横に、乱暴に振るいながら御琴の左手を振り払い、攻撃を繰り出そうとした。
だがそれよりも早く、御琴は両手に青白い光を纏わせ、それをエレオスに向ける。
「激震来光!!」
両手から光が放たれただけでなく、御琴の周囲に何時の間にか展開していた青白の光球がエレオス目掛けて飛び、その全身を打つ。
「なっ!?」
まばたきする暇も無く炸裂した御琴の光の弾幕。
それらを喰らう中で、エレオスは違和感を感じる。
「(痛くない?!身体を打つ感覚は確かにあるのに、消耗は確かにあるはずなのに、何で痛みを感じないの!?)」
巨大な光の奔流に飲まれる中、装甲が粉々に砕け散り、肌が露になっても、焼かれる痛みが殆ど感じられない。
むしろ、温もりを感じるという異様なものだ。
それを感じ取った途端、エレオスの身体から急速に力が抜け落ちていった。
「こ、これは!?まさか、御琴……!あんたは……!!」
自身の中にある、家族や仲間達の、御琴達への憎しみの声が消えていく。
それこそが自分の力の喪失だと分かったが、その理由に気づいたエレオスの瞳に涙が溢れ始める。
鬼神の鎧が砕かれるというより、柔らかな温もりで外されていくという、彼女にとって本来跳ね除けたかった感覚。
その拒絶の心をも、光の中に入り込んで接近していた御琴は瞳を以て受け止め、包み込んでいた。
殺意も敵意も無い、慈愛に満ちた瞳を……

光が消えて、転身が解けたエレオスが落下する中、御琴が加速をつけて降下する事で彼女を受け止めに入り、霊気の放出で落下の衝撃を緩和して着地する。
だがエレオスは、涙に濡れて顔もクシャクシャに歪んでいたのが、すぐさま鬼の形相となって再び転身し、御琴の胸元へ右手を突き出す。
その手は確かに御琴の胸元に触れたのだが、そこから突き破る事も、突き立てる事も出来ずピタリと止まってしまっていた。
エレオスがどれだけ力を入れても、御琴が転身を解いても、鋭く伸ばされた貫手は全く動かない。
そればかりか、エレオスの力は砂像が崩れ落ちるかのように失われていった。
「……もう、終わりです。今回は」
人間の姿に戻り、身動きが取れなくなったエレオスを横たえさせて、御琴はそう告げる。
彼女の宣言と、戦いの決着を見抜いて天地丸達も駆け寄ったのだが、エレオスは御琴を見詰める内に鼻で笑った。
「……御琴。あんたは今言った事の意味、分かってるの?こんな事をしたところで、あたしが挫ける訳じゃあない。此処で倒れたとしても、力を蓄えて、時を経てまた世界の支配に乗り出す事が出来る。それが無いとしても、醜い人間達による世界汚染が行われるわ。騙し、傷つけ、奪い、殺し合う事で、人間達は世界の生命を次々と滅ぼし、最後には自分達をも滅ぼしてしまう。つまり、あんたは戦いの完全な終焉ではなく、たった一時の安らぎを取ったのよ」
馬鹿馬鹿しい上に、無意味。
それがエレオスの、御琴の行動に対する感想だ。
敵を根絶しなければ、争いも悲劇も繰り返される。
なのに、自分を許すかのような情けを掛けている御琴。
そんな彼女がますます許せなく思っていた。
「それでも良いんです。平和が永遠に続けば、私はそう願っています。でも、守るための力は戦いの無い世界で強くなるんでしょうか?」
「!?」
「人と人が競い合うのは、力を高め合う為。平和を保つ為に戦い続ける……それが私達隠忍の成すべき事だと思うんです。戦いが全く無ければ、その時こそ人は忘れてしまう。守るために戦おうとする気持ちを、助けたいという気持ちを……だから、私達は何度でも、あなた達を止めてみせます」
優しいだけの少女が、まさかそのような言葉を口にするとは思っていなかった。
エレオスも、リョウダイやオウランもそこに驚きを感じずには居られなかったが、響華丸は納得したように微笑みを浮かべて頷く。
「やってはならない事をしている人も確かにいます。苦しみと悲しみに翻弄されて復讐を誓う人もいます。だから、そうした人の手を止める事で、その人達の心を救いたい。あなたのその心も……そのために、私達は戦い続けます!」
言い切りと共に見せるその強気で勝気な笑みは、誰の影響を受けたのやら。
意表を突かれた天地丸や音鬼丸、江が思わず感嘆の息を漏らす中、それで良いという同意の笑みで螢とメイアは御琴のその言葉を受け入れる。
そこまで言われて、エレオスも溜息と共に笑わざるを得なかった。
父と刺し違えた戦士が、此処まで大きく変わるとは思わなかったのだから、当然といえば当然だが。
「……なら、それを成し遂げてみせる事ね。あんたの言う通り、今回はあたしの負けだわ。全然力が入らないもの。でも、あんた達に捕まる気は無いし、自害する気も無い」
言いながら、エレオスは起き上がって御琴達から数歩下がった所で全身から光を放つ。
「これは、あたし達の同胞が編み出した取って置き……失われた力を取り戻す為に生命活動を休眠状態にさせる、自身封印の術……これだけ消耗した以上、次に目を覚ますのは数百年かそれ以上後……その時こそ、あたしは勝ってみせるわ!」
「エレ……私達の時代で蘇ったら、その時は私達が相手をするわ。もう、憎しみで誰かを傷つけたりしない。だから、エレには負けない!」
しばしの、あるいは最後の別れを前に、メイアはエレオスと向き合い、そう告げる。
幼馴染であり、それ故に暴走を止めるのが自分の務めと知ったからだ。
「フッ、ますます面白くなって来たわ。次に目覚める時が、ね……」
再び殺気と闘志の込められた笑みを見せつけたエレオスの背後の空間が歪み、そこから開いた異様な空間への道へと彼女は己を入り込ませつつ、その身を光の球へと変えていく。
光の球は小石くらいの大きさにまで縮むと、祈るように手を合わせている少女が刻まれた石となるが、その石も異様な空間が飲み込み、歪みの扉も閉じられた。
他者の手による封印解除を望まず、自身の手で力を取り戻し、自身で目覚め、そして今回のように自身で事を進め動かしていく。
エレオスらしいケジメの付け方であった。
それを見送った御琴は深呼吸と共に目を閉じ、過去を、これまでを振り返る。
誰かを救うための戦いとは、必ずしも敵を倒す事とは限らない。
心と心をぶつけ合い、納得し合う事もまた、戦いだ。
そして今、自分はその入口を潜ったのだ。
その確信に行き着くのに、5秒と掛からなかった彼女は目を開いて天地丸達の方へ振り返り、笑顔と共に口を開く。
「帰りましょう、私達の世界に!」
「……ああ!」
終わりではなく、始まり。
御琴の言葉をそう受け取った天地丸も力強く頷いた所で、一同は宇宙船へと戻り、そこから地球へ帰還していった。

地球の、異次元に降り立ち、隠れ里へ帰って来た御琴達は、茨鬼童子や琴音達の温かい迎えを受けた。
羅士兵達は完全に消滅しており、化け物達も、羅士の一派が来る前から存在していた魔物以外には一匹たりとも残っておらず、日本の方も無事だとの事だ。
そして、同じく迎えに来ていた葉樹が御琴達を別な場所へ案内し、彼女らからの話を聞いた後、一つ間を置いて話を切り出す。
「今回は時空評議会もエレオスの手で歪められかけていました。その過程でリョウダイ達の世界が混乱に陥ったのも事実。しかし、それを理由とした羅士達の決起は不問には出来ません」
「分かっております。その責はこのリョウダイが全て引き受けましょう」
予想通りの決断と見て、リョウダイがそう言うも、彼の袖の端を掴みつつメイアが口を挟む。
「私も罰を受けます。子供達を解放したとはいえ、実行犯である私が一番重いですから」
「リョウダイ様やメイアだけではない。私も同じく羅士。2人だけに罪を背負わせる気は無い」
オウランもそう続くのを見て、葉樹はクスっと笑う。
「人の事は言えませんが、せっかちですわね。実は先程、あなた方の世界の連邦政府が、指導力を失った事で崩壊し、反政府軍が勝利しましたの」
「え?どうしてなんですか?」
メイアにとっては喜ぶべきか否か、どちらとも言えない事だ。
ジャドが自分の環境を直接悪化させ、エレオスが連邦政府を操っていた事実。
その混迷の中での突然の勝利は、偶然としか思えなかった。
「城塞での出来事、つまりエレオスとジャドの持っていた真実は、反政府軍にも届いていたみたいですわ。リョウダイ、あなたの手引きによるもののはず」
「!まさか、余が悪となる姿を示すはずの記録システムが、そのような働きをするとはな……エレオスとの戦いに夢中で存在を失念するとは、我ながら未熟なものよ」
「まあ、その情報が元で、エレオスという後ろ盾を失った連邦政府は混乱し、反政府軍は士気を高め、建造関係の損壊はあっても、戦闘において一切の死者が出る事無く革命が成りましたわ。あなた方のおかげ、として……その働きは、世界の秩序復活としても評価出来るものです」
「それじゃあ……」
御琴の顔が明るくなる中、葉樹の最終的な結論が下される。
「私達日本課の保護下に置かれて過ごす事になりますわ。評議会も監査局も、全面的な見直しが始まったばかりですから、少々落ち着きに時間が掛かると思いますが。ジャドについては、これ以上責める事も出来ません。改めての裁判においても、私から口添えをさせて頂きます。それを以て善処としますわ」
「……ありがとうございます!」
「感謝する、蛭子 葉樹殿」
「このような男に対する厚意、有り難くお受けします」
結論を受けて、涙ながらに葉樹に感謝するリョウダイ達。
全てが完全に解決した訳ではないが、これで一つスッキリしたとして御琴達も一安心し、その晩は茨鬼童子達の家と、宿とに分かれ、戦いの疲れを癒した。

そして翌日、葉樹はリョウダイ、メイア、オウランを連れて時空監査局へ、響華丸も江、螢と共に元の世界へ帰る事となった。
「江よ、お前が居なければ余は自分の世界の夜明けを、この世で知る事無く果てていただろう……お前こそ、余の命の恩人だ」
「あたしは、ただ単に後味悪い締めにしたくなかっただけさ。けど、感謝されちまうと改めて嬉しく思うぜ…この手でやっと、死にそうな奴を助け出せたんだからよ。もっと長生きしとけよ」
「お前も、その熱き魂で世の中を救うが良い……忘れぬぞ」
ガッシリと江とリョウダイが右手を掴み合って握り締める。
年も世界も越えた友情、それが2人の中で結ばれている。
若き昇り竜も、老いた伏竜も、噛み締める意味での笑みを見せ合い、最後には拳をしっかりとぶつけ合った。
「全く侮れない女だ、響華丸。しかしお前を負かした御琴も、想像以上の戦士だ。私は、全てにおいて負けてしまったな……武勇や知略に秀でても、心の面ではまだまだ敵わない……」
オウランが諦めに似た様子で語る中、響華丸は微笑で応える。
「ならば、もっと強くならないとね。心・技・体の全てを……あなたが飽きない限り、いくらでも挑戦を受けるわ」
「はは、次に会える時が何時かは分からないが、その時を目指して私も今後も精進しよう。息災でな、友よ」
刃を、拳を交える事を通じて、競い合う仲へと発展した2人の戦士も、互いに剣を抜き、頭上で交差させて朝日を更に輝かせた。
再会の暁には、刃や拳以外のものを交わすという、声無き誓いを胸に。
「御琴……ありがとう。私達を助けて、勇気を分けてくれて」
「私も、メイアさんが居なかったらエレオスを止める事は出来ませんでした。ですから私からも、ありがとう……」
頬を赤らめるメイアの髪を優しく撫でる御琴にとって、涙は似合わないもの。
だから御琴はメイアを、自分と大きな関わりを持った少女を温かな笑顔で見送ると決めていた。
「色々と、本当は沢山話したい事があるけれども……また会えるよう、頑張るわ。絶対に、あなた達の事を忘れない……!」
「はい……私も、エレオスに言ったように、戦い続けます。伯父様、お兄様、響華丸さん達と共に……!」
メイアもニッコリ笑っていた。
それはかつての迫害で失われていたはずのものだったのだが、ようやっと戻って来たようだった。
数分して、今回の、別れの挨拶もそろそろといった所で葉樹達が先に出発する事になったのだが、螢が小さな声を上げて最後に、と呼び止める。
「城塞は指示通りお日様の方へ送ったけど、大丈夫なの?」
エレオスとの戦いの後、宇宙船で城塞を経由して帰還したのだが、螢は葉樹から『この時代に残すと、人々に迷惑を掛ける事になる為、太陽の熱で完全に城塞を抹消させるように』と指示を受けていた。
一夜にして城塞は地球から太陽へと飛び、それ以外の機能を全て消去したのだが、それで本当に抹消出来るのかが、螢にとっては疑問だった。
葉樹はその疑問にも的確に答える。
「太陽の熱であれば、如何なるものでも抹消出来ますし、総重量も体積も、太陽の活動に影響を与えるものではないと分かりました。故に、問題はありませんわ」
「そっか。でも、そこ以外に捨てても誰かが拾っちゃうんだよね。そしてダメな事の為に使っちゃう……」
「如何なる力も、その心掛け次第で良くも悪くもなる。隠忍の力もまた、そういう事だな」
「エレオス達の言うような、敵を滅ぼす力として使われてはいけない。誰かを救い、守る為の力として僕達隠忍の力がある……」
自分達の始まりの地、そしてそこで起きた戦いの意味。
天地丸も音鬼丸もそれを思い起こし、自分達の力への過信を戒めるべしと改めて認識し、そこへ御琴が付け足す。
「もう一つ。自分自身の思いを貫く為に、力はあると思います。エレオスも、その部分では間違っていないんです。自分の一族の願いを胸に、今後も戦い続ける事を選びましたから。彼女自身、まだ気づかないかもしれませんが」
「自分の思い、か……確かにその通りね。折れない信念、揺るぎない思い、それらにあの時、あなたの、鬼神の力が応えてくれた」
響華丸の目には、今もありありと浮かび上がっている。
鎧が砕けても、瞳の輝きを失う事無く前へ進み、救うべき命を救い、守るべき存在を守ろうとする、吉翔媛子の姿が。
「だからこその、これからだわ」
「はい。エレオスとの戦いの、始まりですね」
終わりにあらず、始まり。
その理解が行き渡った事を受けて、葉樹達は改めて監査局への転移の光に入る。
「またお会いしましょう、皆さん」
「その時までしばしの別れだな、鬼神の血族」
「私達の世界は、私達が守ってみせる。だから、それまでの、今の時代をお願いね……」
「今回こそ、余の生涯最大の名誉としなければならない。真ある道を往く鬼神との出会い、それを生きる力と出来たのだから」
4人がそれぞれの一言を述べると共に光は強まり、光と共に飛んで行く。
その光が見えなくなった所で、今度は響華丸達の番になった。
「今回はお前達に助けられたな。特に螢、お前には驚かされたよ」
「いえいえ。螢、覚えの良さだけが取り柄で、腕っ節では及ばないです」
「なら、その腕っ節も鍛えないとな。頑張れよ、螢」
「は~い」
様々な苦境を打破し、難解なカラクリをも解き明かして御琴や天地丸達に活路を見出させた螢。
「家族を大切にしろよ、音鬼丸。孤児だったあたしが言うのもなんだけどな、家族って良いもんだぜ」
「うん。分かっている。江も次に会う時は、出来たらその『あたし』を止めてくれると良いな」
「安心しな。時が経てば無理が出てくる。そん時こそ『俺』って言う。久方振りに熱い所を見せちまった分、あたしもやっぱガキだって分かるぜ」
「まだまだ伸びるって事だろ?お互い、頑張ろう!」
「おう……!」
響華丸や螢とは別に、少年らしい熱さを示して生き様を貫き、リョウダイに生きる意味を与えた江。
そして……
「響華丸さん……私の勇気を強めてくれる切っ掛けをくれたあなたが、大好きです。あなたの存在も、私が過去と向き合える力になってくれたから……」
大好き、と聞いて互いに頬が赤くなる御琴と響華丸。
見詰め合う2人は少しずつ胸の高鳴りが大きくなるのを感じながらも、両手を握り締め合う。
「私も、大好き。御琴のその眼差しが無かったら、今日の私は有り得なかったわ。御琴の力になっている事が、本当に嬉しい……」
胸の高鳴りから、身体が火照りかけ、白い頬が赤みを帯びていく2人。
そこから先は、言葉では表せないものを心と心で伝え合い、ゆっくりと、どちらからともなく手が離れた所で再び言葉を交わし合った。
「何時かまた、会える時の為に……私も戦い続けるわ。あの世界の光を、温もりを大きくする為に」
「響華丸さん、また何時か……!」
最後は小さな笑い声で終わりとして、響華丸は江、螢と共に空へ飛び、開かれた空間の歪みを潜って行く。
その様子を御琴は笑みを絶やさぬまま見送っていた。
「(あそこを越えて、今も繋がっている……私と響華丸さん……そして、琥金丸さんも……)」

時を、世界を超えての戦いは、形を変えながらも続く。
その戦いの中で分かり合えるという真実を貫き通すために、御琴達は戦い続ける。
そうした彼女達の気持ちは、見上げる青空の如く澄み渡っており、太陽もまた心ごと空を照らしていた。



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あとがき

遂に終焉となった今作。
前作とは違った、様々なONIシリーズとの関連性を更に深めての今回。
終わらない物語の中で、ONI達がどう動くのか、その先に何が見えるのか。
それは人それぞれの思いの数だけありますが、誰もが望んでいるのはやはりハッピーエンドかなと思っています。
零において、終焉がどのような形となるのかは全く不明、そんな中でこそ光を、という気持ちもあるかと。
そして『苦しみの原因をどうするのか』もまた、人の考え方によって異なるだろうと感じております。
今回御琴を主人公にしたのは、『敵の中で、憎しみと悲しみに振り回されている者を救う』慈愛を決め手とする為であり、戦いの展開も決着も相応しいものにした、という事です。

簡単ながら、これを纏めとします。
今作もご愛読頂き、誠にありがとうございます。

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